サミル・ポール・カプール米国務次官補は今年2月、アメリカは南アジアで特定の国が過度に大きな影響力を持つのを防ぐと発言した。これはトランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)とも一致する姿勢だ。それによると、アメリカは「いかなる国であれ、アメリカの国益を脅かすほど支配的になるのを許すわけにはいかない」のであり、「世界と地域の勢力均衡」を維持しなければならない。ちなみに、このNSSで、インドに関する言及はほとんどない。
アメリカのこうした姿勢は、地政学の領域にとどまらない。クリス・ランダウ米国務副長官は、3月のインド訪問時、アメリカは「20年前に中国で犯したのと同じ過ちをインドで繰り返すわけにはいかない」と述べた。すなわち、インドが「あらゆる市場で発展することを許し」、やがて「多くの商業分野でアメリカを打ち負かす」のを許すつもりはないというのだ。
インドはこの新しい現実に適応しなければならない。そのためには戦略的思考を根本から変える必要がある。もはやアメリカとの緊密な関係に基づき、南アジアやその周辺で影響力を維持することはできない。今後は近隣諸国への経済協力や政治的配慮、そして小国への公共財提供によって、この地域で影響力拡大を図る必要がある。
そしてアメリカは、自らのアプローチを見直すべきだ。より多元的な地域秩序を望むにしても、インドとのパートナー関係を犠牲にして進めるべきではない。
トランプ政権は、アジア太平洋地域でアメリカとインドが競争関係になっても、世界の舞台ではパートナーであり続けられると思っているようだ。だが、それは容易ではない。そしてその結果は、今後の米印関係だけでなく、南アジアと世界の戦略的情勢にも影響を与えるだろう。
ブラマ・チェラニ BRAHMA CHELLANEY インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。
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