Kanishka Ajmera Aditya Soni
[3日 ロイター] - 大規模な人工知能(AI)関連需要に端を発したメモリー半導体急騰は、マクロ経済の幅広い分野で価格上昇につながる「チップフレーション」を招くリスクがある――。モルガン・スタンレーのアナリストチームがこう警告した。
スマートフォンやパソコンのメーカーにとっては、値上げか利益率の低下を甘受するかの選択を迫られている形だ。
モルガン・スタンレーは2日、メモリー半導体価格が1年で6倍に跳ね上がったと指摘した。半導体メーカーが巨大テック企業のAIインフラへの巨額投資への対応に苦慮しており、一般向けのデバイス用半導体よりも利益率の高いデータセンター向け半導体を優先していることが背景にある。
同社はレポートで「AIインフラ向けの供給制約として始まった事象が、現在ではハードウエアの利益率、デバイスの価格妥当性、クラウド費用、インフレ、そして政策へと波及している。(この需給逼迫が)マクロ経済上の懸念事項となっている」と説明した。
確かに一部の半導体メーカーは増産を進めているが、新工場の建設にかかるコストと煩雑さを考慮すると、実現には数年かかる可能性が高いという。
同社の分析では、過去の好不況のサイクルとは異なり、今回のメモリー半導体急騰は「永続的な需給の再編」となる可能性がある。大手クラウド企業やAI企業が長期契約などの確約を通じて生産能力を囲い込む一方で、従来の買い手はより引き締まった変動の激しい供給枠を奪い合う状況に置かれているからだ。
さらに同社は、消費者物価への直接的な影響は限定的かもしれないが、生産者物価、企業の利益率、クラウド費用、設備投資、新技術導入の遅れといった形で圧力が表れているとの見方を示した。
家庭用ゲーム機「プレイステーション」を手がけるソニーグループからパソコン大手レノボに至るまで、家電メーカーは既に値上げを実施しており、巨大テック企業もメモリー半導体価格の急騰によって数十億ドルの追加支出が生じることを明らかにしている。
例えばマイクロソフトは4月、今年の支出額1900億ドルのうち約250億ドルが半導体価格の上昇分になると述べた。
調査会社のIDCは、価格上昇が潜在的な購入者、特に低価格帯での意欲を削ぐため、パソコンとスマートフォンの市場は今年急激に縮小すると予測している。
モルガン・スタンレーは「半導体メーカーは価格上昇、利益率の改善、見通しの不透明感の解消といった恩恵を受ける。一方で川下のハードウエア企業はコストを吸収するか、価格転嫁するか、製品設計を変更するか、あるいは需要破壊のリスクにさらされることになる」と述べた。