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中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が、北朝鮮を訪問するようだ──。韓国メディアがそう報じたのは5月20日前後のこと。既に中国政府関係者が首都平壌入りして準備を進めているとの報道もあったが、中国側は正式に認めていない(本稿執筆時点)。

長年、中国と北朝鮮は表向きは緊密な関係にあるように見えながら、水面下では緊張が続いてきた。中国は北朝鮮を核保有国として正式に認めたことはない。その一方で「北朝鮮に唯一影響力を持つ国」の地位をロシアに奪われることを懸念している。

習が最後に国賓として北朝鮮を訪問したのは2019年6月だ。コロナ禍の3年間を差し引いても7年の空白は長い。しかも習はこの間、韓国を含む多くの国を訪問してきたし、多くの国の首脳が中国を訪問してきた。

この5月には、ドナルド・トランプ米大統領に続き、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も中国を訪れた。北朝鮮にも24年にプーチンが、25年にはベトナムの最高指導者であるトー・ラム共産党書記長が訪れている。

外交の空白は、それ自体に政治的意味がある。なかでも北朝鮮は極めて閉鎖的な国だから、中朝外交は本質的に特殊な性格を持つ。どちらも共産主義国家で、歴史的に支え合ってきた。北朝鮮は中国にとって唯一の同盟国だ。

だが、朝鮮戦争を共に戦うことで築かれた「血の同盟」は、見かけほど強固ではない。習が訪朝を先延ばしにしてきたのは、北朝鮮が事実上の核保有国となったことに対する中国の不満を示している。そしてそれが、両国関係の深化を妨げてきた。

半島の非核化は過去の話

そうはいっても北朝鮮は既に核兵器を保有している。最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記にとって、核は現体制を維持する究極の保証であり、小国の運命から逃れ、アメリカと交渉するときの唯一の切り札でもある。それを手放すよう要求することは、現体制の安全装置を捨てろと迫るのに等しい。

だが中国は長年、朝鮮半島の非核化を外交目標の1つに掲げてきた。それなのに北朝鮮を核保有国と認めれば、核不拡散体制を支持する自らの立場を傷つけるとともに、日本や韓国の連鎖的な核武装を誘発しかねない。

中国はかつてアメリカと協力して、北朝鮮に核開発計画を放棄するよう圧力をかけた。それが北朝鮮との間に距離を生むことになり、中朝関係の悪化につながった。

だが最終的に中国は、朝鮮半島の非核化を原則として掲げつつ、北朝鮮の核保有を黙認せざるを得なくなった。「朝鮮半島の非核化」という表現は今も中国の外交文書に見られるが、もはや中朝関係の条件ではなくなった。

それよりも中国は朝鮮半島の平和と安定、南北の政治的和解、アメリカの軍事的抑止への抵抗、そして北朝鮮の安全保障上の正当な懸念を尊重することに重点を置くようになった。

この方針転換は重要だ。それは中国が朝鮮半島の非核化よりも北朝鮮との関係強化と、日米韓の安全保障協力に対抗することを優先するようになったことを意味する。

その意味で、習の訪朝は新しい話し合いの機会となる。もはや北朝鮮の核にこだわって、それ以外の領域での協力を滞らせるのは得策ではないと、中国は気付いたのかもしれない。北朝鮮が核保有国であることを前提に中朝関係を再構築する必要がある、と。

習の訪朝は、北朝鮮を中国を取り巻く戦略的緩衝圏に引き戻す意味も持つ。日米韓の安全保障協力が深化し、日中関係が悪化するなか、中国にとって北朝鮮の戦略価値は高まっている。核武装した北朝鮮は中国にとって脅威だが、日本にとってはもっと脅威であり、中国にとっては重要なカードになり得る。

習の頭にはプーチンもちらついている。金がロシアに接近したのは、北朝鮮の安全保障を引き受けてくれる後ろ盾を必要としているからだ。そして、プーチンにはそれを提供する意思がある。

だが、ロシアが北朝鮮に与えられるのは軍事・安全保障面の支援だけだ。中国が1980〜90年代に国内で推し進め、北朝鮮に採用を促してきたような経済成長モデルは、ロシアにはない。

中国が距離を置き続ければ、北朝鮮はますますロシアに接近し、中国はいずれ朝鮮半島における主導的地位を失う可能性もある。中国としては経済と安全保障の双方で利益を提示しながら、北朝鮮を再び「北京主導」の路線に引き戻そうとするだろう。

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【note限定公開記事】なぜ中国は北朝鮮にラブコールを送るのか? 捨てた「長年の外交目標」

 

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