Imad Creidi

[ダンマーム(サウジアラビア)22日 ロイター] - ペルシャ湾内ではホルムズ海峡の封鎖により船員2万人以上が船舶に閉じ込められ、過酷な環境下で恐怖におびえながら過ごしている。イランが海峡の管理権を主張する新たな地図を公表したことで、この試練はさらに長期化する恐れもある。

ペルシャ湾に取り残された船舶は約2000隻。船員2万人余りの多くは下船することもできず、食料や真水の供給も不十分だ。

ここ数週間、ロイターが取材した船員らは苦難と不安に満ちた体験を語った。船員を代表する連盟は、現地の状況は悲惨だと訴える。

インド人船員のサルマン・シディキ氏は先月、取り残された船内から電話で「ここで私たちがしていることと言えば、どうやって夜を過ごすかを計画し、攻撃に巻き込まれないよう神に祈ることだけだ」と語った。

<孤立した生活>

ロイターが22日の週、サウジアラビア沿岸に停泊中の船舶への補給船に同乗した際、あるタンカーの船員らが手すりに集まって手を振ってきた。彼らにとって外の世界と接触できるまれな瞬間だ。

3カ月近くもペルシャ湾に閉じ込められた船員らは、それぞれ少人数の仲間とともに、狭い居住空間、共同の食堂、灼熱のデッキを行き来するだけの孤立した生活を送っている。

2月28日、米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始すると、イランは世界的な石油供給ルートであるホルムズ海峡を事実上封鎖した。和平交渉が停滞する中、イランは封鎖をさらに強化している。

イランがホルムズ海峡の通航要請を管理するために設置した「ペルシャ湾海峡庁」は20日、海峡両側の広大な海域に対するイランの領有権を改めて主張する地図を公表した。

船舶の脱出を求める船主は、イラン側が構築した迷宮のような支払い・許可制度をくぐり抜けなければならない。

国際運輸労連(ITF)のアラブ世界・イラン担当ネットワークコーディネーター、モハメド・アラチェディ氏は「戦争のせいで、船員らの脆弱性と危険性は、ますます極限状態になっている」と話す。

同氏は、給与の支払遅延、船員の帰国支援の拒否といった事例や、物資不足、ミサイルやドローン攻撃への恐怖を説明した。中には、泣きながら電話をかけてきた船員もいたという。

戦闘開始以来、ITFの元には、船の放棄や給与遅延、物資不足などを巡る紛争解決に向け、援助や助言を求める船員2000人以上から連絡が入ったと同氏は述べた。

<立ち往生>

サウジアラビアのダンマーム港からは、沖合に約7隻の大型船が停泊しているのが見えた。平時ならば異例の多さだ。強風の中、タンカーの横では補給船が揺れ、船上の船員らは海越しに声を上げ、医療品が入った大きな袋をクレーンで巻き上げていた。

シンガポールを出港後、戦闘開始時にペルシャ湾で足止めを食った大型貨物船の船長、モヒト・コーリ氏は、最初に海峡閉鎖の可能性を耳にした時、「そんなことが起こり得るなど想像すらできなかった」と振り返る。

彼が乗るドイツ籍の船は、ダンマーム沖で安全な錨地(びょうち)を確保することができた。しかし戦闘開始から1週間が過ぎたころ、乗組員らはイランが湾岸諸国に向けて放ったミサイルやドローンを目撃し、その音を耳にするようになった。

「普段はにぎやかで陽気な乗組員たちが黙り込んでしまった。食事の時間は短くなり、会話もぎこちなくなった」。同氏はインドに帰国後、今月ロイターの取材に応じた。船主が交代要員の派遣を支援してくれたという。

しかし、ITFのアラチェディ氏によれば、多くの船員はさらに悲惨な状況に直面している。月にわずか100―200ドルの給与さえ昨年から支払われておらず、船主が帰国支援を拒否しているケースや、未払い給与を放棄する場合にのみ帰国を認めるケースもあるという。

一部の船員にいたっては、食事は1日1回、米やレンズ豆だけで、家族への連絡や外部に助けを求めるためのインターネット接続も短時間しか利用できないと同氏は説明。「彼らには集団的な介入が必要だ。彼らは我々の経済やサプライチェーンの要であると同時に、働く船員であり民間人だからだ」と訴えた。

湾岸諸国は、物資の補給や乗組員の交代支援など、一定の取り組みを行っている。

サウジ港湾局のサリマン・アルマズルーア総裁は「先行き不透明な海域で船内に取り残された船員にとって世界一重要なのは、たどり着ける海岸があると知っていることだ」と話す。

港湾局はこれまでに、数百隻の船舶に対して食料、真水、燃料、医薬品の補給を支援し、500人以上の船員の下船を助けてきた。アルマズルーア氏は、船を離れることができた船員から感謝のメッセージを受け取ることに、最もやりがいを感じると語った。

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