コククジラは海氷から始まる食物連鎖に依存している。海氷の下で繁殖した藻類は海氷が溶けると沈み、クジラが主食とするプランクトンの餌になる。しかし気候変動の影響で海氷の減少が加速して、この食物連鎖が弱まった。アメリカ海洋大気局(NOAA)広報のマイケル・ミルスタインはチヌーク・オブザーバーに対し、北極圏の状態の変化が漂着の一因となった可能性が大きいと述べ、同局とオレゴン州立大学が続けている調査では、海水温の上昇や餌場の崩壊が大量死に関係していることが分かったと指摘した。
カスケディア・リサーチ・コレクティブは、4月28日までにワシントン州で16頭のコククジラの死骸が見つかったと伝えた。同州では過去50年で最多だった。
うち5頭は同州オーシャンショアーズで発見され、11頭はデセプションパスやモクリップスなどさらに北部に漂着していた。
最も多かったのは栄養失調だったが、少なくとも4頭には船舶との衝突が原因とみられる内蔵損傷があり、1頭は網などに絡まった痕跡があったという。
チヌーク・オブザーバー紙によると、オレゴン州でもシービューやシーサイドで大型のコククジラが発見されるなど、複数の漂着が報告された。ロングビーチ半島にはツチクジラも打ち上げられた。
シーサイド水族館のティファニー・ブースは同紙に対し、強い西風が続いて海岸に押し流される漂流物や死骸が増えていると語った。ただし原因は1つではないと述べ、クジラがどこに流れ着くかは腐敗や浮力も影響すると指摘。「我々は時間をかけて、全体像を把握しようとしている」と説明した。
専門家によると、コククジラの北への回遊は5月いっぱい続く。NOAAはもしも座礁したり死んだりした海洋哺乳類を見つけたら、西海岸海洋哺乳類座礁ネットワークに連絡した上で、安全な距離を保つよう呼びかけている。座礁した動物には訓練を受けた職員しか近づくことができない。
長期的な解決のためには、温暖化が進む北極圏の生態系の問題に対応する必要があると研究者は強調する。短期的には船舶との衝突を減らし、沿岸部の餌場を守り、網などへの絡まりを防ぐ対策の強化が求められる。個体数の回復が進まない中で、こうした対策は緊急性を増している。