急速に進んだ「選挙におけるSNSの武器化」

背景にはまず、SNSにおけるショート動画の隆盛がある。TikTok、X、YouTubeなどの投稿プラットフォームには、閲覧数に応じて投稿者に報酬が支払われる仕組みがある。このアテンション・エコノミーの下で閲覧数を稼ぐために、地上波テレビでは放映できないような過激な内容がもてはやされる。この傾向は、次々にスワイプして閲覧することが前提のショート動画で顕著になる。

そこに2024年以降急速に進んだ「選挙におけるSNSの武器化」が加わる。13年の公職選挙法改正でインターネット選挙運動が解禁されたが、規制対象は候補者自身によるメール配信や有料ネット広告利用で、昨今のSNS事情には対応できていない。

そのため事実上無制約のSNS空間が選挙における空中戦の主戦場となり、自画自賛の広報・広告から対立候補への誹謗中傷まで、大量の動画が投下され、選挙結果を左右するようになった。陣営自ら手がける場合もあれば、報酬目当ての「切り抜き職人」による「勝手動画」もある。

選挙動画は閲覧数を稼げるアテンション・エコノミーの優等生で、特に自民党総裁選挙は最も注目を集める鉄板コンテンツだ。

しかし総裁選は政党内の党首選出制度のため公職選挙法が適用されず、自主規制に頼るしかない。かつては総裁選で「実弾」が飛び交う時代もあったが、今では政治家個人が現金を受領すれば政治資金規正法違反になる。2つか3つの陣営あるいは全陣営から現金をもらう「ニッカ・サントリー・オールドパー」は死語だ。

代わりに議員票は義理と人情、嫉妬と恐怖、利権とポストで動くが、党員・党友も投票する「フルスペック」の総裁選では、国民的な人気も重要だ。

選挙活動の品位を極端におとしめる事件が相次いだ
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