中国が大切にする「ミドル・コリドー」とは
南コーカサスでも同じことが起きている。ここ数年、中国はアルメニア、ジョージア、アゼルバイジャンと戦略的パートナーシップを締結。中国の鉄道企業やインフラ企業は、中国とヨーロッパを結ぶ物流ルート「ミドル・コリドー」にますます深く関与するようになっている。
中国は、同国西部から中央アジアを通り、カスピ海を渡って南コーカサスを経由し、トルコやヨーロッパへ至るミドル・コリドーを重視してきた。このルートの貨物量は、2024年だけでおよそ70%増加した。しかも、このルートはどの区間を見ても、ロシアとイランを迂回する形になっている。
これにこそ、アメリカが注意を払うべきだ。ミドル・コリドーは、中国とアメリカの利害が珍しく重なる地域だ。
中国にとっては、ロシアとイランを通らずにヨーロッパへ物資を運べる経済的価値がある。アメリカにとっては、ロシアとイランの影響力を弱められる戦略的価値がある。トランプ政権のTRIPP回廊構想(アメリカが後押しする、アルメニア南部を通って、アゼルバイジャン本土と飛び地ナヒチェヴァンを結び、さらにトルコ方面へつなげる交通回廊構想)と、中国によるカスピ海横断ルートへの投資は、どちらも同じ地域をめぐる動きなのだ。
ロシア国内では、対中依存はすでに構造的なものになっている。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は約40%に上り、戦前のおよそ20%から増加している。機械、車両、通信機器、デュアルユース技術など、制裁下のロシアの戦時経済を支える主要分野では、中国が60%から90%の物資を供給している。
ロシアにとって中国は最大の債権者であり、最大のエネルギー顧客にもなった。結果、ロシアは石油や天然ガスの大幅な値引きを受け入れざるを得なくなっている。ロシアにとって中国は最大の貿易相手だが、中国にとってロシアが中国の貿易に占める割合は3%強だ。この非対称性は、決して見過ごせるものではない。