「スマッシング・マシーン(壊し屋)」の異名を取ったケアー
2002年にHBOで放送されたジョン・ハイアムズ監督の同名ドキュメンタリー『スマッシング・マシーン』と同様に、主人公は1990年代後半から2000年代前半にかけて活躍した総合格闘家マーク・ケアーだ。
サフディはドキュメンタリーの視覚的手法を取り入れ、「スマッシング・マシーン(壊し屋)」の異名を取ったケアーの実像に迫ろうとする。
マセオ・ビショップ撮影監督の手持ちカメラはリングの内外をボクサーのように機敏に動き、ときおり観客の表情をアップで捉える。
サフディ兄弟はかつて『狼たちの午後』や『フレンチ・コネクション』をお気に入りに挙げた。『スマッシング・マシーン』でも、そうした1970年代の犯罪映画が持っていた粗削りでクセのあるスタイルが採用されている。
ジョンソンはトレードマークのスキンヘッドに黒いウィッグを着け、徹底した特殊メークでケアーに変身した。それでもカメラが映し出す汗と生傷、縫合痕、青あざに覆われた山のような彼の巨体には生々しいリアルさがある。
序盤、無敗を誇っていたケアーが試合で負ける。対戦者が危険な反則技を使ったためケアーは異議を申し立て、敗北は「無効試合」と再判定される。偏りのない裁定に思えるが、極端に勝利に執着するケアーはここからオピオイド系鎮痛剤依存と怒りの悪循環へと落ちていく。
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