<円買い・ドル売り介入に対する批判的な論調が目立つが、本当に「投機的な値動きの抑制」が目的だったのか。一見すると説明しづらい為替介入政策の狙いを読み解く>

4月末から5月初旬にかけて、10兆円規模の円買い・ドル売り介入が日本政府・財務当局によって行われた。4月末にドル円は160.7円付近まで円安が進んでいたが、介入を受けて、2回にわたり円高方向に大きく動き、5月11日時点では157円台付近で推移している。

こうした中、為替介入政策については、「時間稼ぎ」「無駄打ち」などの批判的な見解がメディアでは散見される。その見方は果たして正しいのか。

為替介入政策は、為替市場における投機的な値動きを抑制し、経済成長を阻害しないようにする対応策である。

ただ、3月以降の円安圧力の強まりは、中東情勢の緊迫化を契機とした米国の金利上昇によってほぼ説明可能である。今回の介入政策は、投機的な値動きを抑制するというよりも、160円を超える円安は許容しないというレンジを明示した意味合いが大きい、と筆者は考えている。

高市政権は経済成長を重視しており、財政・金融政策を徹底することで経済成長率を高めようとしている。実際に「責任ある積極財政」を掲げて財政政策の枠組みを大きく変えつつあり、さらに日本銀行の審議委員の選定も官邸主導で実現した。

しかし、円安を許容せず通貨高に誘導する対応は、引き締め的な政策であり、経済成長にブレーキをかけるものだ。この意味で経済的な視点でみると、今回の高市政権による為替介入は説明しづらい。

このため、今回の為替介入は、値動きを抑制するためというより、「円安の行き過ぎ」を喧伝するメディアや円安で損失を受ける一部の国民からの批判に対して、政治的に政策を繰り出した側面が大きいとみられる。

そして、高市政権の経済政策運営の中で、今回のドル売り介入を戦略的に位置付けることもできる。

「責任ある積極財政」を実現するために
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