<中国の諜報機関が、若者の間で続く「寝そべり現象」の流行を「外国の反中組織による陰謀だ!」と喧伝している>

4月末、中国政府の諜報部門である国家安全省が「『寝そべり』を扇動する彼らが忙しく動き回っている」と題した記事を公開した。海外の反中国組織がインフルエンサーに資金を提供し、「努力は無駄」「奮闘=搾取」といったナラティブを組織的に広めている、と彼らは主張する。近年中国語ネットではやっている「躺平(タンピン、寝そべり)」という言葉は、「反中国勢力からの洗脳」「中国若者の思想をむしばむもの」であり、国家安全保障上の脅威だと定義付けた。

「躺平」が流行し始めたのは5年前。2年間も定職に就かず、月々わずか200元(約4000円)の最低限の生活費で暮らすある中国人の若者が、中国語ネットの人気掲示板「百度貼吧(バイドゥ・ティエバ)」に、「寝そべりは正義」「寝そべりこそが私の知的な運動だ」と投稿。たちまち「内巻(激しい競争)」な社会に疲れた若者の共感を呼び、「寝そべり」は流行語となった。

「996(午前9時から午後9時まで週6日働く)」という流行語が象徴する過労文化、過酷すぎる競争社会、不動産価格や教育費の急騰で結婚も出産もできなくなった絶望感……。全てに反発した結果、自ら欲望を抑え、最低限の生活で社会の搾取を拒絶する無気力な「寝そべり現象」が生まれた。

しかし、この無気力さは中国政府に深刻な危機感をもたらした。若者みんなが消費せず、結婚もせず、仕事すら放棄して「寝そべり」に徹するならば、経済成長や人口維持の基盤そのものが失われる。「中国の夢」という国家目標も破綻し、共産党による一党支配の正統性すら根底から崩壊しかねない。

社会矛盾を「海外勢力」に責任転嫁
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