「トランプ関税」を正当化する計算式は世界から嘲笑を浴びた
「トランプ関税」を正当化する計算式は世界から嘲笑を浴びた KYLIE COOPERーREUTERS

通商法301条の屁理屈

301条は通商法に盛り込まれた限定的な規定であり、米政府が貿易相手国による不当、不合理あるいは差別的な政策や慣行に対して独自に対抗措置を講じる権限を定めている。トランプが昨年持ち出して却下されたIEEPAとは異なり、これまで何度も使われている。

中国は、まさにその条件に当てはまる。業界団体や研究者には、補助金や国家援助、通貨操作などを通じて産業や輸出をゆがめる中国の国家主導型経済こそ、新たな301条適用の中心に据えるべきだと主張する向きもある。

ただし、問題が1つある。今回USTRが301条適用に当たって提示した「他国の過剰生産能力」に関する調査が、特定の不公正貿易を対象にしたものでも、悪質な貿易相手国だけに絞られてもいない点だ。しかも外国の通商政策と、特定の米産業への具体的な被害を結び付ける明確な基準にも基づいていない。

代わりにUSTRは「国内で消費できる以上の商品を生産し、余剰分を輸出している国は、それだけで米産業に損害を与えている」と主張する。これでは不正行為との闘いではなく、貿易という概念そのものとの戦争だ。

トランプ政権の通商チームは、外国がアメリカを不当に扱っているかを判断する基準として、2つの指標を挙げている。いずれも相当に乱暴なものだ。

その1つが「工場稼働率」。USTRは、製造能力に対する工場稼働率が70〜75%程度と比較的低くとどまることを「差別的な通商政策」の証拠と見なしている。競争力のない「ゾンビ工場」を延命させているという理屈だ。USTRは、80%以上の稼働率を理想としている。

その論理に従えば、製造業での稼働率が70%台半ばの国は全て、「差別的な通商政策を意図的に推進している」ことになる。アメリカの工場稼働率の多くも、過去20年間は80%を下回る。だがUSTRによれば、それは他国のような「差別的な通商行為の証拠」ではなく、「米産業が本来の競争力を十分に発揮できていない証拠」なのだという。

USTRが「不公正な通商慣行」を示すもう1つの動かぬ証拠として挙げるのが、各国の貿易収支だ。黒字であれ、均衡であれ、または対米赤字でも問題視される。これについてUSTRは「過剰生産の結果として、大規模または恒常的な貿易黒字が生じる。そこにはアメリカ向け輸出の拡大だけでなく、第三国向けに輸出された製品が米市場に流入するケースも含まれる」と説明する。

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【note限定公開記事】トランプ関税戦争は第2幕へ...次なる主戦場「通商法301条」とは?

 

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