【鈴木】 その際に重要なのが、戦略の「透明性」です。地経学の時代には、純粋な経済投資であっても、一部の国の対外的な宣伝によって、政治的意図があると色づけされがちです。だからこそ、日本がなぜその国に投資するのか、善意だけでなく戦略的な重要性や利益の一致を明確に語る必要があります。その方が、かえって信頼を得やすいのです。
【菊池】 ASEANも同様です。日本側には、長年の平和的な経済外交の積み重ねを理由に、相手国は「親日的であるはず」という前提意識がありました。しかし今、ASEAN各国は中国の巨額投資と米国の安全保障の間でシビアに立ち位置を見極めています。日本というだけで歓迎される時代は終わりました。先人の積み上げた日本への信頼を基盤にしつつも、それに甘えずに、真に重要な課題に対し、日本にしかできない技術と解決策でその国の成長に深く関与していくことが不可欠です。
【鈴木】 資源国ではない日本が、石油や食料で世界を支配することはできません。しかし、半導体材料、工作機械、航空機用炭素繊維など、「日本がいないと困る」分野は確かに存在します。特定の国に効く、こうしたチョークポイントをどれだけ戦略的に握れるか。それが日本の生きる道です。
【菊池】 そのためには、継続的なイノベーションが欠かせません。JBICとしても、スタートアップ支援に加え、フュージョン(核融合)など次世代技術への投融資を進めています。成功が保証されない分野にも、あえて網を張る姿勢が必要です。
【鈴木】 地経学の世界に、全員が得をする「ウィン・ウィン」はありません。依存を減らすには必ずコストがかかり、誰かが痛みを引き受ける必要があります。平時に小さな痛みを受け入れることで、有事の致命的な痛みを避ける。その覚悟が企業経営者には求められています。
■調査の概要
2025年7月~8月にかけてJBICが実施・回収した日本企業の海外事業展開の動向をまとめた調査で、製造業・非製造業合わせて計733社より回答。報告書全文はオンラインで公開されている