Takahiko Wada
[東京 30日 ロイター] - 日銀は30日、28日の金融政策決定会合で取りまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の全文を公表し、原油価格高騰の物価への影響について詳細な分析を示した。先行き景気が減速し、企業収益も減益となる可能性が高いとみられる中で「賃金上昇率が大幅に加速し、そのことがさらなる物価上昇率の高まりにつながる可能性は高くない」と指摘した。
日銀は28日の金融政策決定会合で、賛成多数で政策金利の据え置きを決めた。原油高が起点となって、物価と賃金が相互に上昇率を急速に高めていく場合は利上げを急ぐ必要が出てくるが、今回の分析は現時点でそうした必要性が乏しいことを示唆している。
展望リポートは、原油価格の上昇について、販売価格への直接的な転嫁(1次的波及効果)と、収益マージンの拡大や賃金上昇による間接的な物価上昇圧力(2次的波及効果)に分けて分析した。
原油高による物価への波及効果については「1970年代のオイルショック時と比べて小さくなっている」と指摘した。オイルショック以降の産業構造の変化に加え、省エネ技術の進展により、GDP1単位を生み出すために必要なエネルギーが減少してきていることを挙げた。ただ、価格転嫁のスピードは、企業の価格設定行動の積極化などにより、2021年―22年の輸入物価上昇局面に比べて「速くなる可能性が高い」とした。
また、消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は、原油価格上昇より円安ショックの方が大きいことも示した。
<リスクシナリオ分析>
展望リポートの全文では、中東情勢の影響に関するリスクシナリオ分析も示された。
原油価格(ドバイ原油)が4月の水準である1バレル105ドル程度で今年の年末まで高止まりするシナリオを想定し、貿易収支の悪化で足元の水準対比10%円安が進行、世界的な景気減速懸念から株価が20%下落するとの前提を置いた。その結果、26年度の実質GDPは前年度比0.4%増(政策委員の見通し中央値は0.5%増)に下振れるほか、コアCPIは3.1%上昇(同2.8%上昇)に上振れるなどとした。
その上で、コアCPIは26年度、27年度と3%程度の伸び率が続く姿になるため「適合的な期待形成を通じて、中長期的な予想物価上昇率の押し上げ要因となり得る」と指摘した。
展望リポートの中心的な見通しは、ドバイ原油が105ドル程度を出発点に見通し期間の終盤にかけて70ドル台程度まで下落していくとの前提を置いて作成した。