Howard Schneider Ann Saphir

[ワシントン 29日 ロイター] - インフレへの懸念が高まり、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を据え置く中、8年間にわたった任期を終えるパウエルFRB議長は、トランプ政権による攻撃からFRBの独立性を守るため、当面は理事としてFRBにとどまる意向を示した。

議長として最後となる連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「5月15日に議長としての任期が終了した後も、一定期間、理事として職務を継続する」との意向を表明。「目立った反対派のような存在になろうとしているわけではない」とした上で、FRBを取り巻く政治情勢が「落ち着き」、FRBが本来の使命に集中できるようになることを見届けたいとした。

その上で「適切な時期と判断した時点で」FRBを去るとし、これはFRBの金融政策遂行能力を脅かす一連の法的攻撃に対する懸念を反映したものだと語った。

パウエル氏は、政治的攻撃が「FRBという組織を傷つけ、国民にとって本当に重要な、政治的要因を考慮せずに金融政策を実施する能力を危険にさらしていることを懸念している」とし、米国民が政治的影響を受けないFRBを信頼できることが重要だとの考えを改めて示した。

同氏の理事としての任期は2028年1月まで。自身が理事職をいつまで続けるかについては将来判断すると述べた。

パウエル氏は「われわれは皆人間だ。完璧さを期待してはならない。しかし、政治的な考慮なしに決定を下すことは期待してほしい」と力を込めた。

一方、トランプ大統領はSNSに「ジェローム・『遅過ぎ』・パウエルは、他に職が見つからないからFRBに残りたいのだ。誰も彼を欲しがっていない」と投稿。これまでには、パウエル氏がFRB理事として留任すれば解任すると脅している。

米上院銀行委員会は29日、ケビン・ウォーシュ氏のFRB議長指名を13対11で承認。これを受け、ウォーシュ氏の指名承認は本会議での採決に進む。本会議でのウォーシュ氏の指名承認の採決は、早ければ5月11日の週に行われる可能性がある。その場合、パウエル氏の議長任期が終わる前にウォーシュ氏が就任宣誓できる見通しだ。

<決定8対4>

パウエル氏のコメントは、金融市場が広く予想していた政策金利の据え置きというFRBの決定、およびインフレ上昇に対する政策当局者間の懸念の高まりの両方を覆い隠す形となった。

決定は賛成8、反対4と、1992年10月6日以来、最も大きく意見が割れたほか、FOMC声明ではインフレへの懸念が強められた。

ミラン理事にとっても今回が最後のFOMCになるとみられている。ミラン氏は理事就任以降、全てのFOMCで利下げを主張した。

声明発表後、米国債利回りは1カ月ぶりの高水準に上昇し、ドルは主要通貨バスケットに対して上昇した。先物市場では、FRBが年内は利下げを実施せず、来年前半に利上げに動くとの見方が高まった。

インフレ・インサイツのプレジデント、オマイル・シャリフ氏は、「今回の声明ではインフレへの懸念が引き上げられた」とし、物価上昇圧力への警戒感を踏まえれば、緩和バイアスを維持する判断に一部の当局者が同意しなかったのは驚くべきことではないと述べ、今回の決定が8対4だったことには一定の合理性があるとの見方を示した。

<インフレ懸念>

米国とイランの交渉が膠着し、中東からの供給の混乱が長期化するとの懸念が強まる中で米原油先物は急伸し、数週間ぶりの高値で清算された。

パウエル氏は、3月の個人消費支出(PCE)価格指数インフレ率が3.5%になるとの見通しを示した。

同氏は「その見通しは現実のものだ。様子を見守る必要がある」と指摘。政策当局者は今週の会合で利上げの可能性を示唆する準備はできていなかったものの、「(政策スタンスの)中心はより中立的な方向へシフトしつつある」と語った。

「そのような形でガイダンスを変更する際には、多くのシグナルが送られることになる。現時点では、その点についてシグナルを送る必要はないと、われわれの大多数が考えていたのだろう。しかし、いずれその段階に来るかもしれない」と述べた。

もしそのような転換が行われるとすれば、それはウォーシュ氏のFRB議長任期中に起こる可能性が高い。同氏はパウエル氏の後任として、6月16─17日のFOMCを主導する見込みであり、トランプ氏はそれを受けて利下げが続くと予想していると述べている。

しかし、それは困難な課題となる可能性がある。投資家の間では、むしろ利上げが必要になるかもしれないとの見方が強まっている。

今回の会合では、クリーブランド地区連銀のハマック総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁は金利据え置き自体には賛成したものの、現時点で声明に緩和バイアスを盛り込むことは支持できないとして、政策決定に反対した。

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