特に日本の場合は、DXが簡素化や標準化にならないという文化的な特徴を背負い、紙の事務量がかなり残る中で、単純事務労働に多くのパワーが割かれています。また「答えのある問い」への「反復練習」がメインの教育が今でも続けられており、そうした単純事務労働を支えています。その意味で非常に特殊な状況にあるわけです。

多くの先進国では、まず90年代からDXによる業務の標準化と簡素化が進み、事務要員の削減が進みました。今回はこれにAIショックが続いているのですが、日本の場合は、DXによる効率化のプロセスを経ずに、いきなりAIショックが起きると、雇用に関しては大混乱となる危険性があります。

一方で、DXを先送りした、AIの本格導入も先送ってしまうようですと、これはこれで危機的になります。そうなれば、主要国の中での生産性や競争力は、今よりずっと劣ってしまうこととなり、円安や債券安が破滅的な水準にまで加速しかねないからです。

危険な罠か? ラストチャンスか?

その一方で、AIの時代には美意識や感性の部分がより大切になるわけで、日本という深く独自のカルチャーを持った国はかえって有利になるという考え方もあります。そんな中で、紙とハンコに縛られた事務労働から、多くの人材が職人やアーティストに転換してもらい、AIを使いこなして生産性を上げれば、様々なジャンルで世界を制覇することも可能になるかもしれません。

このAI革命が雇用に及ぼす影響については、特に日本の場合は非常に大きなインパクトがあると思います。大変に危険な罠であるかもしれませんが、一発逆転につながるラストチャンスかもしれないのです。特に雇用と教育の変革については、国民的な議論が必要だと思います。

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