Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東京 28日 ロイター] - 政府が年内の改定を目指す国家安全保障戦略などの「安全保障関連3文書」は、新たな防衛費の規模と財源が大きな論点の一つになる。2022年に策定した現在の文書には、27年度までの5年間で計43兆円程度と明記しているが、当時と比べ円安も大きく進行した。更なる増額は必至だが、仮に再び「防衛増税」が必要となれば国民への丁寧な説明は不可欠だ。厳しさを増す安全保障環境の下、防衛費の安定的な確保をどう実現するか、政府内ではすでに財源を巡る議論が交わされ始めている。

〈「米国に見せる必要がある」〉

「目標とする防衛費の金額は今回も明記することになるだろう。ただ、『防衛省の予算』とイコールではない」。政府の安全保障政策に精通する関係者はロイターの取材にこう述べた。

改定される3文書の一つ「防衛力整備計画」には現在、27年度までに必要となる防衛費を歳出ベースで43兆円程度としている。今回の改定で防衛省予算以外の費目を「防衛費」としてさらに積み上げ、規模を膨らませるとの考えを示したものだ。同関係者は「人工衛星やGPS(全地球測位システム)に関する経費なども入れることになるだろう」とも説明した。

これまでトランプ米政権は日本の防衛力強化を陰に陽に求めてきた。35年までに防衛支出を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるという北大西洋条約機構(NATO)基準を公式に要求したことはないとされるが、前出の関係者は「中国や北朝鮮の脅威がある以上、日本が防衛力の向上にしっかり取り組んでいることを米国に見せる必要がある」とも述べた。米へのアピールもあり、「防衛費」を極力大きく見せたいとの思惑が透ける。

〈「顔色をうかがう余裕はない」〉

こうした「大きく見せる工夫」は、22年の策定時にも論点の一つだった。3文書の一つ「国家安全保障戦略」には、「予算水準が現在のGDPの2%に達するよう所要の措置を講ずる」と明記。「現在の」が22年を指すことから、GDPが成長すればその分だけ「2%」は目減りする。2%という数字をアピールしつつ意図的にハードルを下げた形だ。実際、政府は27年度とした達成目標を大きく前倒し、25年度補正予算の時点で達成した。

ただ、政府内からは、今回の改定でGDP比の目標値を明記しない可能性を指摘する声も出ている。改定に携わる政府関係者は「22年当時は2%ありきで費目を積み上げていた」と明かす一方、「今回はあくまで日本の国力強化に必要な装備や予算を積算していく方針だ」と述べた。

目標値を設ける必要はないとの声は自民党からも出ている。安全保障に精通する政務三役経験者は「米国の顔色をうかがって目標を決めている余裕はいまの日本にはない」と指摘。増大する中国の国防費や北朝鮮の核開発を例に挙げ、「日本への攻撃を思いとどまらせるくらいの防衛力は、独自の意思として持たなければならない」とし、あくまで日本の判断で必要な体制を構築するべきだとの考えを強調した。

〈「効果的に効率的に資源配分を」〉

現在の目標である43兆円は法人税などの増税、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入などで賄うこととされている。一方で、当時1ドル=130円台だった円相場は160円近くまで下落。輸入に頼る装備にはより多くの資金が必要となる状況だ。

改定を取り仕切る国家安全保障局(NSS)関係者によると、27日に開かれた有識者会議の初会合では、早くも出席者から「国民に大きな負担をお願いすることになり得るので、安全保障をめぐる状況を理解していただくことが重要だ」との指摘があったという。

出席した黒江哲郎・元防衛事務次官は会議後、財源について記者団に「(防衛力の強化は)いまの世代が恩恵を受ける話なので、きちんと正面から対応するべきだ」と述べた。将来にツケを残さない形で財源を確保するべきだとの考えを示したものだ。

有識者会議の第2回は6月上旬に開かれる予定だ。今後はテーマごとに議論し、秋には報告書をまとめて政府に提出する。前出のNSS関係者は「財源論議が実際に交わされるのは会議の後半だろう」と話した。

報告書を受け、最終的な財源確保の道筋をどう定めるのか。27日の会議で、高市早苗首相は「外交力と防衛力を、経済力、技術力、情報力、人材力と有機的に連携させて、日本の総合的な国力を徹底的に強くしていくことが大事だ」と強調。長期戦への備え、先端技術の活用や有事にも耐える防衛装備品のサプライチェーンの強靱化を例に挙げ、「優先課題を特定し、効果的に効率的に資源配分を行い実行に移していく必要がある」と語った。

(鬼原民幸、竹本能文 グラフィック作成:田中志保 編集:橋本浩)

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。