Leika Kihara

[ワシントン/東京 20日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春会合などに出席するため訪米した日銀の植田和男総裁は、市場が注目していた4月の利上げに明確な方向性を示さなかった。一方でタカ派的なシグナルも出しており、4月に見送る場合でも6月以降の利上げカードは手放してないことを示している。

市場は4月の利上げに明確なヒントがなかった点に注目し、4月会合での利上げの織り込み確率は18%まで低下した。だが、植田氏は片山さつき財務相とともに臨んだ16日の会見で利上げの可能性を否定もせず、中東情勢の動向と日本経済への影響を精査する必要性を強調した。

日銀の考えに詳しい関係者3人によると、利上げ・現状維持両方の選択肢をテーブルに残した形で、27、28日の金融政策決定会合は米国とイランの停戦交渉の行方などを踏まえながらギリギリまで議論する可能性があるという。「不確実性が大きく、現時点で決断するのは尚早」と、関係者の1人は述べた。別の関係者も同様の見方を示した。

植田氏はワシントンで先週開かれたIMF会合、主要7カ国(G7)と主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議の期間中、中東情勢をめぐる不確実性の拡大を背景に、他の主要中央銀行と同様に日銀も「様子見」姿勢を取るべきとの見方にさらされた。片山氏はG7後の15日の記者会見で、欧米の中央銀行が様子見姿勢を強めていると指摘した。市場には、日銀の早期利上げをけん制する発言と受け止める向きもあった。

IMFの日本担当ミッションチーフのラフル・アナンド氏もロイターとのインタビューで、日銀は段階的な利上げ計画を維持できるとの見方を示した。アナンド氏は「総合インフ​レが一時的に急上昇したとしても、日銀はそれをやり過ごし、基本シナリオが維持された場合​と同じペースで緩和策の撤回を再開できる」と述べた。「他の多くの中央銀行と異なり、日銀にはこのショックを一時的なものとして受け止める余地がある」とした。

<4月利上げの見方も>

こうした中、植田氏は16日の会見で「見通しが実現する確度とそのリスクを踏まえて判断する」と述べた。過去に利上げを実施した際、「検討」「議論」するといった表現を使ったことと対照的だ。このため市場では、4月の政策修正観測が急速に後退した。

「植田総裁が『利上げ』という言葉を使わなかったことは、今月は利上げ見送りという市場へのサイン」と野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストはみる。

一方で、植田氏はタカ派的なシグナルも発信しており、4月会合を含め利上げ姿勢を維持していることを裏付けるものだった。植田氏は中東情勢の緊迫化による景気下押しリスクを指摘する一方、堅調な企業収益や政府の経済対策の効果が成長を下支えするとも指摘した。日本の実質金利は依然として極めて低く、金融環境は緩和的だとして、他国とは状況が異なるとの認識を示した。

「日銀はおそらく利上げ継続方針自体を取り下げる必要はないとみているだろう」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の首席債券ストラテジスト、六車治美氏は言う。「4月でなければおそらく6月、遅くとも7月に利上げするだろう」と話す。

一時70%を超えた東短がまとめている市場の4月利上げ予想は、20日現在18%まで低下した。一方で6月までなら73%の織り込みとなっている。

日銀には利上げを続ける根拠がある。政策金利は0.75%と、中立とされる水準を下回っており、インフレ率が2%前後で推移する中、実質金利の大幅なマイナスが景気過熱につながる懸念がある。利上げを先送りすれば円安が進み、輸入物価や物価全体を押し上げるリスクも指摘される。

少数ながら、4月の会合で利上げに踏み切る余地があると考えるアナリストもいる。

「総裁はおそらく4月会合でどうするかまだ決めていない。米国とイランの交渉の行方と市場の反応をギリギリまで見極めるだろう」と、BNPパリバのチーフエコノミスト、河野龍太郎氏は語る。「停戦交渉がリスクの大幅な緩和につながれば、4月に利上げをする可能性もある」

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。