一方で当時の税制は消費よりも投資を奨励していた。ロジェに言わせれば「資産形成を促す税制があり、資本市場ではインフレ率の低下と株価収益率の上昇が長く続いていた」。
つまり株式や債券、不動産の価値が着実に上昇する一方で、必要な資金を借り入れる際の金利は下がっていた。この状況が長く続いたから、ベビーブーム世代の富は順調に増え続けた。
この世代が莫大な富を蓄えるに至った背景には、政策や市場動向だけでなく文化的な要因もあった。例えば親の世代の倹約精神だ。
西海岸のカリフォルニア州を拠点とする投資顧問のアダム・スピーゲルマンによれば、「あの世代は30年代の大恐慌を知る人たちに育てられ、その過程で大切なことを学んでいた」。
「あの人たちの親は無一文で、貯金なんてなかった」とスピーゲルマンは言う。「だから彼らも幼い頃から見えを張らず、贅沢をせず、しっかり貯金をしてきた」
さらに、当時は相対的に生活費も安く、消費を奨励する圧力も少なかったとスピーゲルマンは指摘する。
住宅費や交通費を含め、日常的な出費が所得に占める割合は低かったし、「少なくとも80年代までは、贅沢は敵だと思われていた」。しかも企業年金や福利厚生が今よりも手厚かったから、質素に暮らしていれば老後も安心と、たいていの人は思っていた。
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