
もしクラマトルスクが陥落すれば、民間人と兵士たちの両方を脱出させるのに、こうした車も使われるかもしれない。昨年末に公表された和平案によれば、それは現実味を帯びている。
ロシアはウクライナの工業の中心地だった東部ドンバス地方(ルハンスク州とドネツク州を指す)全域を支配下に収めることにこだわっているとみられるからだ。
だが、ドネツク州のかなりの部分は今もウクライナ軍が押さえている。奪われてもいない領土をロシアに差し出すなど、ウクライナ政府にとっては受け入れ難いことだ。レーシャも、クラマトルスクを失うなど「控えめに言っても、受け入れ難く耐え難い」と語る。
「行ったことのある町や村をロシアに奪われるたび、家に押し入ってきた何者かに、家族の写真アルバムのページを破られたような感じがした」とダーリャは言う。
ナターリヤも、クラマトルスクを諦めたりしたら、これまでに命を落としたウクライナ人は全て、無駄死にしたことになってしまうと言う。マリーナも、「そんな事態はとにかく想像できない」と語る。
現在のところ、クラマトルスクは恋人たちにとって愛を育む大切な場所だ。いつ砲弾が飛んでくるかもしれないという恐怖も、目に見える形でウクライナ軍が存在しているおかげで軽減されている。
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