中東あたりから来ているUberの自転車配達員だろう。若い子だった。彼が信号無視で交差点に突っ込み車にはねられ、目の前でポーンと飛ばされて亡くなる現場に居合わせた。それは1秒前まで本人さえも分からない。しかし人は何かのタイミングが重なり、ある瞬間に簡単に死んでしまう。それが街中で、目の前で起きた衝撃は大きかった。
サンクスギビング(感謝祭)の日に大柄な白人男性がミニクーパーの座席で亡くなっていて、NYPD(ニューヨーク市警察)が駆け付けたのだが、死後硬直で外に出せない場面にも出くわした。街を歩けば兵士に出会うことも多い。
移民を止めてほしい人たちは、トランプの政策に胸をなで下ろしているかもしれない。リベラルが多いニューヨークでは、有名な女優が眉間にしわを寄せながら「イスラム市長の誕生に祝福を」とやっているが、心では距離を取ろうとする人もいる。
市長が誰に代わろうが大統領が誰になろうが変わらない。その世界を牛耳る怪しい巨大な力に怯えながらも、自分の愛する人が幸せでいることに精いっぱい力を尽くして生きている。この街の住人たちは普段は無愛想、ドライで言葉は少ないが、街中に自分の国のご自慢の音楽が爆音であふれ、乳母車を押していたりつまずいたりするとすぐに誰かが「アー・ユー・オーケー?」と声をかける。
僕を含めて、この生々しいニューヨークの中で一人一人が愛や平和を尊重し、高騰する家賃の中で今月も家があることに感謝し、もう駄目かもしれないと弱音を何度も吐きながら、それでもやっぱりニューヨークからもらうエネルギーに励まされて、ここで踏ん張っている。