マスコミも激しい取材合戦

金正恩が行くところには常にマスコミのカメラが押し寄せた Channel NewsAsia / YouTube
約3000人という内外のマスコミ陣もシンガポール当局、米朝両国の警備陣などの厳しい規制の中、激しい取材合戦を繰り広げた。会談後の合意書署名式が行われたカペラホテルの一室ではカメラマンらメディアを北朝鮮側の警備陣が仕切ろうとするのを米、シンガポール側が阻止する様子も「生中継」された。また特権的立場を利用して両首脳に迫る北朝鮮側のカメラマンを米シークレットサービスが押し戻す様子も映し出されるなど、メディア規制を巡る対立では米朝の警備陣の凌ぎあいもうかがえた。

市民生活への影響についてシンガポールの独占的メディア「メディアコープ」のテレビ局「チャンネル・ニュース・アジア」は繰り返し「マイナー・インコンビニエンス(少ない不便)」と控えめに表現していたのが印象的だった。

一方で英BBC放送はシンガポールからの生中継で金委員長を「ディクテイタ--(独裁者)」という単語を使って表現するなど、国による立場の違いが米朝首脳会談を伝える報道ぶりにも表れていた。

北朝鮮を何度も訪問し、金委員長と個人的親交のある米バスケットボールの元スター、デニス・ロッドマン氏は12日の首脳会談に合わせてシンガポール入りした。同氏は米朝双方から特に招待を受けた訳ではないが、シンガポールから米テレビCNNのインタビューに応じていた。

こうしたシンガポールの数々の米朝会談狂想曲は今後もしばらく続けられる見通しで、シンガポール観光の新たな「目玉」として人気を集めることになりそうだ。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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