一強の油断が落とし穴

自由党はかつて過激な民族的マイノリティーとつながりがあるとして、有権者の不信を買っていた。00年には自由党の有力議員がタミル人のテロ組織の資金集めとみられる夕食会に参加し、一大スキャンダルになった。

アトワルの一件は、票集めのため過激派にまで取り入ろうとした自由党の恥ずべき過去――トルドーが消したい過去を有権者に思い出させたのだ。

注目すべきは、最近のトルドーの失点が見たところ全てオウンゴールであること。インド訪問以外にも、近頃のトルドー政権は勇み足が目立つ。

17年12月には、雇用主が中絶の権利を認めなければ夏期の就労体験プログラムの補助金を出さないという方針を打ち出した。この決定は激しい批判を浴びたが、自由党政権は頑として譲らなかった。アメリカと違ってカナダでは保守VSリベラルの「文化戦争」が起きていないため、リベラルはやりたい放題だ。

議会の多数議席を握る自由党はおおむね野党の抵抗なしに、どんどん政策を実現できる。トルドー政権は怖いものなしのホッキョクグマのようなもの。政治家なら誰しもそうなりたいだろうが、天敵がいてこそ政治センスは磨かれる。

敵のいない世界でぬくぬくと冬籠もりを決め込んでいるトルドーと自由党。問題は次の選挙までに目覚めるかどうかだ。

From Foreign Policy Magazine

本誌2018年4月17日号掲載

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