――本書では、記者やプロデューサー、ディレクター、編集者など「組織の中で表現の仕事をするサラリーマン」のことを〈サラリーマン表現者〉と呼んでおり、副題にも「〈サラリーマン表現者〉の誕生」とある。
NHKでディレクターとして番組制作にたずさわっている頃、サラリーマンとして表現者であり続けることは難しいと感じていた。本書でも丸山鐵雄に表現者としての限界があったことを書いたつもりだ。しかし、NHKを退職し、「筆一本」で活動していくなかで、そこにも表現者としての限界があるということを私は痛感することになった。
〈サラリーマン表現者〉を褒め言葉と受け取る人はほとんどいないだろう。しかし、表現者に限らず、組織にいるからこそ可能な仕事があるという意味では、必ずしも侮辱語にはならない。
ただし、インターネットなど新しいメディアの登場で、奇しくも丸山鐵雄が入れ込んでいた素人も表現者になれる時代になった。〈サラリーマン表現者〉が〈素人表現者〉とどう付き合い、どう取り込んでいくのか――または取り込まれるのか――は、テレビ、新聞、書籍などの旧メディアの今後にさらに影響を与えると考えている。