Orhan Coskun Birsen Altayli

[アンカラ 7日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は、首相時代から20年にわたり権力を維持してきた。勢いづく野党勢力から自身の業績を守るべく、そしてこれまでで最も厳しい政治的試練を乗り切るために、大統領選挙に向けた運動に全力を挙げている。

5月14日の投票日を前に、エルドアン大統領は厳しい逆風に悩まされている。ただでさえ経済危機の責任を問われていたところへ、2月には大地震に見舞われ、初動対応の遅れと、建築基準の不徹底が多くの犠牲につながった可能性があるとの批判を浴びている。

世論調査では接戦が予想されており、識者は、エルドアン氏率いるイスラム主義に根ざした公正発展党(AKP)が政権を獲得した2002年の状況に似ていると指摘する。このときの選挙も、高いインフレ率と経済の混乱が背景にあった。

対立候補は、エルドアン政権下のトルコで実施された政策の多くを撤回すると約束している。エルドアン氏は、イスラム色の強い保守的な社会を構築し、周辺地域に積極的に働きかける国をめざすという構想に基づいて改革を進めてきた。

エルドアン氏は、かつて宗教的な詩を朗読したことで実刑判決を受けたこともある。2016年には軍の一部によるクーデター未遂が発生し、反乱兵士が議会を攻撃して250人の犠牲者が出た。切羽詰まった局面は初めてではない。

これだけの大一番となった大統領選・議会選を前に、これまで10数回の選挙で勝利を収めてきたベテラン政治家であるエルドアン氏は、得意の戦闘的な姿勢で批判に反撃している。

エルドアン氏は、野党勢力は大災害に便乗しようともくろんでいると批判しつつ、5万人以上の犠牲者を出した震災の現場を何度も視察し、迅速な復興と、建築基準に違反した建設事業者への処分を公約している。

選挙運動の前哨戦として、国内産業の成果を祝う記念式典で景気をつけた。たとえば、初の国産電気自動車の発売、あるいは、イスタンブールで建造された、国産の無人機を運ぶトルコ初の強襲揚陸艦の引き渡し式などだ。

またエルドアン氏は、黒海ガス田で産出する天然ガス施設の操業式典で、家庭向けに一定量の無料供給を約束した。さらに、国内初の原子力発電所の落成式典を実施し、式典にはロシアのプーチン大統領もオンラインで参加した。

主要メディアがエルドアン大統領の動静を盛んに報じる一方で、国営メディアは野党統一候補であるケマル・クルチダルオール氏についてはほとんど触れない。野党側からは不公正だとの批判が出ている。

野党統一陣営に対するエルドアン氏の攻撃の1つに、非合法化されているクルド労働者党(PKK)の支援を受けているという批判がある。PKKは1980年代以来武力闘争を続けており、4万人以上の死者が出ている。

クルチダルオール氏はクルド人系の国民民主主義党(HDP)から支持を受けており、クルド人の人権を擁護し、エルドアン氏が「数百万ものクルド人をテロリスト扱いしている」と批判している。

エルドアン氏は保守派有権者へのアピール強化をめざしており、同性愛に反対の立場を打ち出し、LGBTの権利は「規範から逸脱した」概念であり、これと戦うと表明している。

<「共にトルコを築く」>

世論調査では決選投票までもつれ込む可能性が見えており、エルドアン氏がリードを許しているとする結果も出ている。このあたりに、エルドアン氏が異例の経済政策を進めたことで発生した生活費危機の深刻さが窺われる。

トルコ当局はインフレ率が上昇する中、経済成長の起爆剤として金利引き下げを進めたが、そのせいで2021年には通貨リラが暴落し、インフレをさらに悪化させた。

AKPがもっと正統派の経済政策に回帰する兆しは見られるものの、エルドアン氏自身は先月、自分が政権の座にある限り利下げを続け、インフレもそれに伴って沈静化すると発言した。

権力の座に就いて最初の10年間、エルドアン氏の主要業績の1つは経済だった。当時のトルコでは長く好景気が続き、新たな道路や病院、学校が建設され、国民8500万人の生活水準は向上した。

イシク大学(イスタンブール)で国際関係学部長を務めるセダ・デミラルプ氏は、「エルドアン氏が負ければ、そのイメージに傷がつく。だが同氏を支持する人々は、そう簡単に彼を見捨てたりはしないだろう」と語る。

イスタンブール中心部の市場で取材に応じたハリム・デュマンさんは、物価上昇のせいで多くの食料品には手が届かなくなってしまったと話すが、それでもエルドアン氏が問題を解決してくれると信じている。デュマンさんは、「エルドアン大統領なら、問題をあっさり解決してくれるに決まっている」と語る。

<庶民出身>

エルドアン大統領はイスタンブールの貧困地区で生まれ育った庶民出身だ。イスラム系の職業訓練学校に通い、地域政党の青年部リーダーとして政治の世界に入った。イスタンブール市長を務めた後、AKP党首として国政に転じ、2003年に首相の座に就いた。

トルコでは1960年以来、4回にわたり軍によるクーデターで政権が倒れたが、AKPは軍を懐柔し、2005年には欧州連合加盟という数十年にわたる宿願を果たすべく交渉に入った。だがその後、加盟交渉は停滞している。

西側の同盟諸国は当初、エルドアン政権下のトルコについて、イスラムと民主主義の活気ある共存であり、独裁と停滞からの脱出に苦心する中東諸国にとってモデルになるのではないかと考えていた。

だが、エルドアン氏による統制強化の動きは国内を分断し、国際社会を警戒させた。熱心な支持者らは、エルドアン氏はイスラム主義による教育を国民の生活の核心に呼び戻し、信心深い労働者階級を擁護する指導者である以上、さらに強い権限を与えられるのは正当だと見ている。

だが反対派は、権力の亡者となった指導者が独裁へと傾いている、と表現する。

クーデター未遂の後、当局は粛清を開始し、7万7000人以上が未決囚として収監され、15万人が公職追放または職務停止の処分を受けた。報道の自由を推進する複数の団体によれば、今のところ、トルコは世界で最も多くのジャーナリストを投獄している国になってしまったという。

エルドアン政権は、クーデター賛同者や過激派組織「イスラム国」、PKKの脅威がある以上、こうした粛清は正当化されると述べている。

国内では、アンカラ周縁部にそびえる広大な新大統領府がエルドアン氏の新たな権力の象徴となった。一方、対外的にはトルコはますます自己主張を強めており、シリアやイラク、リビアの情勢に介入している。強い攻撃力を備えたトルコ製の軍事ドローンが展開されることが多い。

トルコ製ドローンは、ロシアによる侵攻に対するウクライナの抵抗にも活用されている。

だが、こうしたトルコによる介入に同調する国はほとんどない。低迷する経済を抱えて大統領選挙に臨む中で、エルドアン氏は周辺地域におけるライバル国との関係改善を模索している。

(翻訳:エァクレーレン)

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