とはいえ『ジョン・ウィック』シリーズは昔の映画のパロディーでは決してない。本シリーズのユーモアは、大真面目な顔をしているところから生まれている。所々に分かりやすいギャグもちりばめられているが、これも「この映画をシリアスに受け取るなよ」と観客に伝えたいから。『ジョン・ウィック』のコメディーとしての素晴らしさは、ぱっと見はコメディーに見えないところにある。

例えば第3作『ジョン・ウィック:パラベラム』で、ウィックはガラスの陳列ケースがずらりと並ぶ部屋に足を踏み入れる。本シリーズでガラスが出てきたら、粉々に割られると相場が決まっている。だがウィックは敵に吹っ飛ばされてガラスに勢いよくぶつかり、ぼんと跳ね返るのだ。

第4作『ジョン・ウィック──コンセクエンス』でウィックは、パリのサクレクール寺院に向かう長い階段を戦いながら上っていく。だが階段のてっぺんに来たところで敵に蹴飛ばされ、一番下の段まで転がり落ちてしまう。そこまでの尺がばかばかしいほど長いのだ。

シリーズのどの作品にも、喜劇王バスター・キートンへのオマージュが感じられる。くそ真面目な顔でやるどたばた喜劇だということを考えれば当然だろう。