適応することは、変化し続けること

人間は本能的に変化を嫌います。同じことを続けていれば、想定外の出来事が起こりにくく、短期的には生命の危険も減るでしょうし、脳のエネルギーを消費せずに済みます。しかし、人間の脳は数十万年前から変わっていませんが、現代社会の変化はあまりにも速くなっています。

そのため、「時代の変化の速さ」と、「生物としての変化を嫌う本能」の両方を調和させることが、適応障害にならずに長く働くための重要なポイントとなるでしょう。

適応障害とは、ある環境に対して自分の特性が嚙み合わず、強いストレスを感じることで心身に不調が現れる状態を指します。環境と嚙み合わないと感じた時に、これまでの自分の考え方や行動を振り返って、少しずつアレンジやチューニングをすることができれば、適応障害にはなりにくいです。

人間は本来、変化を嫌う生き物ですが、変化に慣れるための方法があります。それは、「常に何か新しいことをする」習慣を持つことです。小さなことで構いません。

例えば、次のような小さな工夫を取り入れるだけでも効果があります。

・いつも歩く通りから、一つ外れた道を歩く

・コンビニでいつもとは違う飲み物を買ってみる

・ランチで行ったことのない店に行く

・電車でいつもと違う車両に乗る

こうした小さな変化を習慣にして、脳に新しい刺激を与え続けることができれば、

・脳の可塑性(かそせい=脳の神経回路が変化し、適応する能力)の促進

・認知機能の強化

・記憶力の向上

・精神的な若さを保つ

などの効果があると言われています。

「変化をする」ことに慣れておくことは、適応障害の予防において非常に有効です。

※第1回:こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?

※第2回:かえって体調・メンタルが悪くなる人も...「休職の前に」知っておきたい「注意点」と役立つ制度とは?

吉田英司(よしだえいじ)

日本医師会認定産業医・心療内科医、株式会社ベスリ代表取締役

研修医修了後に、外資系経営コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーに参画。主に、中期計画の策定、新規事業戦略、事業再建などのテーマでコンサルティングを約3年経験。トップマネジメントに向けた戦略の立案と共に、現場社員への実行支援に精力的に取組む。

その後、シャープ、ルネサス エレクトロニクス、上場外資IT企業、外資化学メーカー、東京オリンピックパラリンピック組織委員会などで産業医を歴任し、社員個人の健康支援だけでなく、全社的な健康経営や健康施策の立案と推進を行う。

産業医や心療内科医として働くかたわら、日本のビジネスパーソンの可能性を最大化するために株式会社ベスリを設立し、企業の産業保健活動支援やリワークでの復職支援を行なっている。

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