企業にとっての「危険信号」

私がコンサルタントとして考えさせられるのは、退職代行と職場健全化の関係だ。

たしかに、退職代行の利用が広がることで、一部のブラック企業に厳しい現実を突きつけることになる。ハラスメントが横行する社風を放置すれば、優秀な人材ほど早めに去っていく可能性があるからだ。

ブラック企業とまでは言えなくても、何らかの組織の問題を抱えている企業も「なぜ自社で退職代行が使われるのか」を考えざるを得なくなる。

上司との関係性や企業の労働環境など、解決すべき課題が隠れている可能性が高い。もし上司のパワハラや理不尽な引き止めが原因だとすれば、会社として何らかの対策は急務だ。

退職代行の利用は、企業にとって一つの「危険信号(アラート)」と言ってもいいかもしれない。

「一時的な流行」ではない

退職代行サービスが一時的な流行で終わるとは思えない。転職サービスと同様に、ある一定のマーケットを掴み、発展し続ける。人々の労働観が変化する中で、退職代行が担う役割はこれからも大きくなるはずだ。

私は経営コンサルタントとして、どちらかというと企業側に立つ人間だ。そういう点からしても、優秀な人材が退職代行で去る事態を黙って見過ごすわけにはいかない。

退職代行サービスの登場は、企業と従業員の関係に大きな転機をもたらしたといえる。

今後、退職代行の事業者は、コンサルティングを含めた新しいサービスを次々と登場させ続けるだろう。だが真に健全な職場を求めるなら、企業の自助努力が不可欠だ。とくに上司と部下との、絶え間ないコミュニケーションと理解が欠かせない。上司側だけでなく、部下側にも主体性が求められる。

退職代行が生む波紋を他人事とせず、問題を直視することが、組織と個人のよりよい未来につながると考える。

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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