<ローマ帝国では食器や化粧品にも使われた鉛。大気が汚染されると、都市でも農村でも認知能力の低下を招いたようだ──>

数千年前のローマ領は鉛汚染が深刻で人体に影響があったことは、古文書や骨格の遺物など歴史的・考古学的証拠が示唆している。そして新しい研究によると、人々のIQを低下させた可能性もある。

鉛の経路は釉薬(うわぐすり)を使った食器や塗料、化粧品などがあったが、「ローマ時代の銀鉱山の採掘と精錬による(大気の)鉛汚染は、人間が環境に及ぼした大規模な影響の最初の明白な例だろう」と、論文の筆頭執筆者ジョセフ・マコネル(Joseph McConnell)は語る。

研究者たちは北極圏で採取された紀元前500~紀元後600年の氷床コアを分析し、大気モデルを用いて気流を再現。大気中の鉛濃度はローマ帝国の隆盛とともに紀元前15年ごろに急激に高まり、パックス・ロマーナの衰退が始まる165年ごろまで比較的高い水準が続いたようだ。

現在の疫学から、幼少期の鉛への曝露はローマ帝国全体でIQを2.5~3ポイント下げたと推定される。都市と農村、エリート層と非エリート層を問わず、認知能力の低下を招いたとみられる。

ローマ帝国初の大規模な伝染病となった「アントニヌスのペスト(Antonine plague)」が、大気の鉛汚染が深刻だった約200年間の直後に発生したことも「興味深い」と論文は述べている。

<参考文献>

McConnell, J. R., Chellman, N. J., Plach, A., Wensman, S. M., Plunkett, G., Stohl, A., Smith, N.-K., Vinther, B. M., Dahl-Jensen, D., Steffensen, J. P., Fritzsche, D., Camara-Brugger, S. O., McDonald, B. T., & Wilson, A. I. (2024). Pan-European atmospheric lead pollution, enhanced blood lead levels, and cognitive decline from Roman-era mining and smelting. PNAS, 121(0), e2419630121. https://doi.org/10.1073/pnas.2419630121

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