アメリカ政府が期限としている2026年末までに月標準時を、というのはできそうでしょうか。

臼田 ちょっと無理そうですね。26年に方向性を決議しようっていうのは多分大丈夫だと思いますが、その後に各国に決定した方向性で技術開発を加速するように要請して......と考えると、実際の策定は30年頃、あるいはそれよりも後になるかしれません。まあ、月標準時の策定はNASAが非常に熱心に求めているので、前倒しになることもあるかもしれませんけれど。

 秒の再定義のほうは順調でしょうか。

臼田 現在、各国で次世代原子時計の開発が非常に盛んな状況です。原子分光技術というのはノーベル賞の系譜みたいなもので、その余力として時間の標準に研究成果が回ってくるというイメージなんです。ただ、まだ決定的な方向性は出てきていないと思います。もう少し時間がかかりそうですね。

 次世代原子時計と言えば、日本の香取先生(秀俊・東京大教授)が考案した光格子時計が有力候補として挙げられています。産総研がキログラムの再定義に貢献したことや、香取先生の研究により、国際度量衡委員会で日本がますます期待されている、日本の発言力が増したなどと感じることはありますか。

臼田 それは間違いなくあります。ヨーロッパやアメリカも次世代原子時計では頑張っているのですが、我々としてはぜひ、香取先生の研究を秒の基準へと推していきたいところです。

 香取先生は現在でもノーベル賞候補の一角に挙げられていますが、ぜひ秒の再定義にも利用されることで、受賞により近づいてほしいですね。

■続きはこちら:「エレキ少年」が「中二病」を経て「科学の根底を支える守護者」になるまで

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます