【対外的攻撃性の特徴と影響】

イスラム国サヘル州の対外的攻撃性の特徴であるが、他のテロ組織にも言えることだが、オンラインでの過激化とリクルートが顕著である。モロッコで逮捕された容疑者は、オンラインで過激化され、リビア人の司令官から指示を受けていたとされる。これは、デジタル技術を駆使した遠隔動員能力を示す。

第二に、攻撃の多様性である。モロッコでの計画では、遠隔操作爆弾による同時多発攻撃が企図され、従来の戦術とは異なる高度な手法が採用されていた。この攻撃性はモロッコのような観光依存国にとっては大きな脅威となり、テロ成功が経済的打撃と国際的批判を招く可能性がある。

また、サヘル地域の不安定性が北アフリカや欧州に波及すれば、難民流入やテロの連鎖を引き起こし、西側諸国に新たな安全保障上の課題をもたらす。モロッコ当局は過去10年で大規模テロを防いできたが、イスラム国サヘル州の持続的な攻撃意図は、対テロ政策をさらに試すものになろう。

【イスラム国サヘル州の今後】

 

2025年2月のモロッコでのテロ計画摘発は、国際安全保障上、イスラム国サヘル州がサヘル地域を超えた対外的攻撃性を示したケースと捉えられよう。その経緯は、中東での敗北後の再編成、地域の混乱を利用した拡大、モロッコという安定的国家への挑戦という形で進化してきた。

対外的攻撃性の背景には、グローバルなジハード運動の維持、モロッコの戦略的重要性、サヘル地域の不安定性がある。

今後、イスラム国サヘル州の脅威に対抗するには、軍事力だけでなく、情報収集や国際協力が不可欠である。モロッコの成功例は、事前監視と迅速な介入の有効性を示すが、デジタル空間での過激化対策やサヘル地域の経済・社会開発も求められる。

イスラム国サヘル州の攻撃性は、アフリカから欧州に至る地域の安全保障に影響を及ぼす可能性があり、国際社会の協調した対応が必要である。

【トランプ政権はどう対応するのか】

最後に、トランプ政権はイスラム国サヘル州にどう対応することが考えられるか。

現時点で、トランプ政権がイスラム国サヘル州に積極的な軍事行動に出ることは考えにくいが、トランプ政権はソマリア北部を拠点とするイスラム国ソマリア州の拠点を空爆し、最近ではイエメンの親イラン武装勢力フーシ派への軍事攻撃を積極的に行なっている。

上述のように、2017年のニジェール南西部で発生したトンゴ・トンゴ襲撃では米兵4人が犠牲となっており、米国権益を守るためなら攻撃を躊躇しない姿勢に徹するトランプ政権であれば、仮に同様の事件が発生した際、イスラム国サヘル州にも攻撃の手を強める可能性が考えられよう。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます