円安ドル高が続く可能性は高くないだろう

これまでの金融緩和の成果もあり、 日本だけがデフレ不況に苦しんでいた2012年までと現在の状況は異なる。現行の金融政策の体制を変えるべきとの政治からの要請も大きくない。先述したとおり、10年前の日銀総裁交代の際はドル円市場は大きく動いたが、報道どおり雨宮氏が総裁となっても、為替市場でみられた円安ドル高の反応が続く可能性は高くないと思われる。


なお、仮に、リーマンショック後の停滞期に不十分な対応を続けた白川前日銀総裁を支えていた山口氏が新総裁となれば、金融政策のレジームを黒田体制以前に戻すという、岸田政権の意図が強いことを意味する。このリスクシナリオの可能性は低下したと思われるが、この場合為替市場では大幅な円高が続く可能性は高かっただろう。


報道どおり雨宮氏が新総裁となる場合、岸田政権が金融政策のレジームを維持する意図があるという点では、先述の初期反応を除けば短期的な金融市場への影響は限定的だろう。発足当初は、黒田総裁体制と同様の政策が続くとみられる。

新執行部で金融緩和の枠組み修正が早まる可能性も

一方、黒田総裁は、「2%インフレ目標の実現」の判断基準として、約3%の賃金上昇率(定昇除く)を重視しているとみられる。雨宮氏が、どの程度の賃金上昇が必要と考えているかは、現状明確ではない。この点について、黒田総裁の考えをすべて踏襲するか不確実な部分が残る。


今春の賃金上昇率が20年以上ぶりの伸びに高まると予想されるが、2%インフレを定着させる、3%の賃金上昇にまでは至るのは難しいだろう。この判断基準を雨宮氏が引き続き重視すれば、新執行部となっても日本銀行が、2023年中に長期金利ターゲットの撤廃など、金融緩和の枠組みを変え引締めに転じないと予想される。

現時点のメインシナリオではないが、雨宮氏が十分と考える賃金上昇のハードルは黒田総裁らと比べて低いかもしれない。黒田総裁の退任を機に、長期金利ターゲットの撤廃などの政策対応が前倒しになる可能性は決して低くない、と思われる。


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