ちなみに北前船の歴史を振り返ると、その発展を支えたのも様々なイノベーションであることがわかる。弁才船という走破性のよい形状、丈夫な帆布の発明(松右衛門帆布)、江戸幕府による航路整備(インフラづくり)、寄港時に無税にするように幕府から各藩への指示(規制緩和、自由貿易支援)、人口増による肥料の需要増(マーケットの成立)に、船首がリスクテイクする買積船というビジネスモデル(売買しながら航海)が組み合わさることで、北前船の隆盛がもたらされた。

しかしながら、この北前船のビジネスモデルも、電信技術の発達や鉄道網整備といった新しい破壊的イノベーションによって、衰退していく。特に電信技術の発達は、情報格差による商品の価格差を利鞘にするビジネスモデルを直撃した。

つぎに、観光業という側面からでは、山代温泉は開湯1300年の歴史がある他、市内に山中温泉、片山津温泉という3つの温泉郷を抱えており、高度成長期の団体旅行ブームに合わせた観光モデルで発達してきたため、近年の団体旅行型から、個人旅行へというパラダイムシフトへの対応が急務となっていた。そこにインバウンド需要が神風として明るい希望をもたらしていたが、それも今回のコロナ禍による急激な落ち込みにより大きなダメージを与えている。

加賀市の戦略的取り組み

こうした状況の中、市長に就任した現在の宮元市長は強烈なリーダシップの中以下のような施策を次々と繰り出し成果を出している。

・行政窓口業務:行政手続きの139申請を電子化した他、マイナンバーカードの申請率76.5%(令和3年4月30日時点)として、全国のトップを走る。

・教育分野:コンピュータークラブハウス加賀の運営や、加賀ロボレーブ国際大会の開催による小学生からのデジタル教育、ロボティクス教育の支援を実施。

・新産業育成:空の産業集積をめざし、加賀市の3Dドローンマップを作成し、ドローンでの医薬品搬送の実証実験を行った。また、直近では東京大学らと連携し、温泉熱等を利用したカカオの森作りなどにも着手し、新たな産業づくりへの取組を開始している。

さらに、前述した「e加賀市民制度」はこれまでの市民・市民以外に加えて「電子市民」という新たなカテゴリーを設けて、 宿泊費支援やオンデマンドタクシーの利用や法人設立支援など官民の様々なサービスを提供する。これまで加賀市と接点のなかったような人々へも、加賀市の魅力をオンライン・オフラインの両面から届け、 リモートワーカー及び移住者を増加させ、将来的な人財や産業集積を図ることを目的としている。

当然他府県だけでなく、海外の人とも新たな自治体との関係性づくりをめざしている。従来型のIターン的な移住政策だけではなく、関係人口をデジタル技術で作り出すという先駆的な取組である。この連載でも取り上げた今後増加する多拠点生活者を取りに行く政策でもある。

ダイナミックなルールマネジメントの必要性

限られた人口で、自治体(共同体)を運営していくためには、現状維持だけではなく、従来実施していたことをやめる(リソースの確保)、やり方を変える(デジタル技術や最新テクノロジー)、やり方を変えるためや、新しいテクノロジーを導入するために、ルールを変える・つくる(規制緩和・法整備)が必要となる。

特に従来実施していたことをやめるというのは、ユニバーサルサービスを前提とする自治体(公共)が苦手なことの一つであるが、縮小局面では、やめることによる限られたリソースを確保することが、重要となる。

新しい公民連携の姿