運転免許を返納することによる大きな生活の変化や精神的な落ち込み(クルマ生活習慣病)などにより、人生が狂ってしまう人も多い。

公共交通が充実していない地域では、本人が病気にならなくても、家族の負担がどうしても増える。家族は子供の習い事や通学の送迎と同じように、買い物や病院の送迎に時間を割かないといけなくなる。市内に病院があるならまだしも、遠方にある場合は、付き添いのために1日会社を休む必要も出てくる。このような生活ケアの必要から、地域の労働力確保にも影響が出る。

来たる免許返納に備えて、個々人が移動について生涯計画を持たなければならない時代が来ている。

とはいえ、今日の社会には交通ルールを教える機会はたくさんあっても、暮らしのフェーズに応じて移動を考えるプログラムはほとんどない。

地域ぐるみでモビリティ教育を

免許返納後の生活を考えたり、一生涯のモビリティ設計をしたりする「モビリティ教育」の機会づくりを個々人に委ねるのではなく、社会教育に組み込むなど、地域ぐるみで取り組んではどうだろうか。公共交通が充実していない地域において、クルマが運転できなくなった時に生活できるかどうかは死活問題だ。

筆者が知るかぎり、モビリティ教育を推進している事例は国内にはまだない。ただ、参考になる事例を1つ紹介したい。

長野県伊那市の自転車活用推進計画では、クルマだけに頼った暮らしにならないように、10歳未満の子供から高齢者に至るまで、身体を動かす楽しみを自転車を使って教えている。さらに、自転車にも乗れなくなった時に備えて、パーソナルモビリティの体験もプログラムに盛り込むなど、一生涯の移動という観点の中に自転車活用を位置付けている。

モビリティ教育で地域社会に「好循環」
【関連記事】