だから観ながら思う。クズは人の基本型かもしれないと。あるいはアーキタイプ。要するに仏教でいえば凡夫。寺内が帰依した浄土宗の宗祖である法然は、(自身も含めて)凡夫こそ救われると説いている。この原作に、今村の持ち味である「聖と俗」のダイナミズムが重なる。

あるいは、人間だから堕ちるのだ、堕ちるべき道を正しく堕ち切ることが必要だ、と唱えた坂口安吾の『堕落論』を想起した人も、僕も含めて少なくないはずだ。

一人一人は姑息だ。卑劣ですらある。でも映画はそれを否定しない。むしろ肯定する。ラストの長いカットに、人間を肯定するテーマが集約されている。

magmori220325_2.jpg『競輪上人行状記』(1963年)

監督/西村昭五郎

出演/小沢昭一、加藤 嘉、河合健二、南田洋子

<本誌2022年3月29日号掲載>

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