でも長男も長女も、実際に情が薄いわけではない。彼らにはそれぞれの家族や生活がある。夫を亡くした紀子は、義兄や義姉に比べれば自由に動ける。両親が尾道に戻ると同時に予期せぬことが起き、実家に集まった子供たちは悲報に号泣する。つまり普通なのだ。でも人の普通な日常は、時としてとても酷薄だ。時には誰かを激しく傷つける。それが世界。それが日常。なるほど。深い。

結論。20代前半で何も考えていなかった僕は、『東京物語』をちゃんと理解できていなかった。その発見はあったけれど、やはり小津映画は、僕にとっては窮屈だ。

NW_MRC_02.jpg『東京物語』(1953年)

監督/小津安二郎

出演/笠 智衆、東山千栄子、原 節子、杉村春子

<本誌2020年11月10日号掲載>

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます