欧米は意図的に市民の力の利用を避けてきた

しかし、ロシアなどの攻撃側に比べると、欧米は市民の力を戦略的に活用できていなかった。

ひとつには民主主義国家において市民の活動を国家が誘導するようなことは避けるべきであると考え方があるのだろう。

 

しかし、現状のように実態を無視して過剰に偽・誤情報の脅威を煽って世論誘導するよりは、正しい実態を伝え、市民に協力を呼びかける方がはるかに民主主義的だろう。

冒頭で英暴動での市民の力が有効に機能した実例をご紹介した。日本でもこういった事例はある。たとえば、2021年の福島県沖地震においてはメディアはデマが桁違いに拡散したと報じたが、実際にはそうではなく、もっとも多かったのは有益な情報やデマの抑止だった。

このことは以前、記事(福島県沖地震後にもっとも拡散した外国人関連ツイートは、ヘイトではなく安全情報だった)でご紹介している。

残念なことに、市民によるこうした活動はほとんど報じられることはなく、政府やメディアが偽・誤情報対抗策の一環としてこうした市民と連携したり、支援することも多くはない。そのため活動していた市民の中には無力感を味わう者もいただろう。

市民は民主主義の主役のはずだが、少なくとも偽・誤情報対策において市民の活動は常に無視されてきた。せいぜいファクトチェック団体がとりあげられるくらいだ。

市民が自発的に暴走する偽・誤情報を止めたり、プレバンキングするのは、過去の偽・誤情報対策がリテラシー向上などによって目指していたことでもある。

いまだにそう言っている政府は存在するが(悲しいことに日本もそうだ)、実際には一部の市民はとっくにそうなっていたのである。その一部の市民の活動の実態を把握し、適切な形で連携、支援することこそ今必要とされている。

ただし、民主主義国の中でも極右や陰謀論あるいは権威主義的な政党や政治家などは市民との連携がうまい。極右グループやQAnonがトランプを支持しているのは有名だ。

日本の厚労省もコロナ禍では公に出せないような形で医療系インフルエンサーを利用した世論誘導を行っていたことが情報開示請求でわかっている。その内容の多くは黒塗りになっており、開示されなかった。

ロシアなどに比べると、露骨で否認可能性の低い(実際ばれている)作戦であり、短期的な効果はあったようだが、偽・誤情報問題に関心を持つ市民に厚労省への不信感を抱かせるというマイナスの効果もあった。

偽・誤情報対策において市民活動は無視されてきた
【関連記事】