Howard Schneider
[ワシントン 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は利上げ打ち止めがそう遠い先ではないことを示唆し始め、形だけでも金融政策を正常化する取り組みを終えようとしている。
それにしても正常化の歩みは遅々とした足取りで、過去3年で9回の利上げを何とか実施し、あと数回できるかどうかにとどまる。
今までを振り返ってみると、FRBはいくつかの成果を挙げた半面、失ったものもある。以下に「収支計算」をまとめた。
◎成果
<失業率>
3.7%と49年ぶりの低水準になったことは、FRBが金融危機後に成し遂げた成果であるのは間違いない。
失業率の押し下げには、共和党の減税やトランプ政権による歳出拡大なども寄与したのは確かだ。だが雇用拡大はFRBの想定を超えるほど歴史的な長期に及んでいる。
だからFRBが打ち出した、より低い金利をより長く続ける戦略や、利上げはゆっくり行うというガイダンス、大規模な資産買い入れによる住宅ローン金利などの抑制措置が効果を発揮したということだ。
<バランスシート>
FRBのバランスシートは最大時に4兆2500億ドルに達し、金融危機対応策の柱となった。
ただ時間の経過とともに、特に共和党がFRBに対して金融市場への関与を弱めるよう要求するようになったため、巨大なバランスシートは政治的な重荷へと代わった。それでもジャネット・イエレン前議長は、急速な資産縮小が世界の債券市場にショックを与えかねないとして、政治サイドからの積極的な資産売却要請を無視。その代わりに、保有債券の償還資金再投資を徐々に減らす方法を採用したため、市場に混乱はほとんど見られない。こうしたやり方で過去1年間にバランスシートは約3兆9000億ドルまで減った。
<付利金利>
金融危機後、FRBの大規模なバランスシート拡大により、銀行には準備金があふれ、短期金融市場のコントロールに新たな手段が必要となった。そこで超過準備に対する付利が導入され、市場金利の下限としての機能を果たしている。
付利は一部の連邦議員には不評だが、若干の修正を経ておおむねうまく機能している。
◎失点
<経済見通し>
FRBは2012年、四半期ごとに米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの成長率や失業率、物価上昇率などの見通しの公表を開始した。
その際の2014年の成長率の予想中央値は3.65%だったが、実際は2.4%にとどまり、これを皮切りに実績が予想に届かない事態が続いた。当時、利上げはまったく視野に入っていなかったため、政策運営上は問題なかったとはいえ、常に見通しの引き下げを迫られたことで、FRBの信認が低下したのは明らかだ。
<中立金利>
中立金利は、イエレン前議長時代には政策の1つのよりどころであるとともに、調査部門の取り扱い事項にとどまっていたが、パウエル議長になって混乱の源になっている。
経済分析モデルにとっては、中立金利水準を探ろうとすることは大きな意味がある。しかし当初3.75─4.5%とされた「長期的な」政策金利のレンジが、今回のFOMCで2.5─3.5%とまったく違う領域になったのはどういうことか。最も控えめな表現でも、あいまいと言うしかない。
<政治経済>
FRBは金融危機において、ゼロ金利政策や大規模な資産買い入れなど初めての措置を導入。それ以降FRBの行動にはあらゆる方面から監視の目が強まっているが、特に連邦議会とホワイトハウスからの批判が活発だ。
共和党のアンディ・バー議員は2月、パウエル氏に対して「あなたたちの仕事はFRBの資産買い入れの巻き戻しを続け、徐々に予測可能な形で市場ベースの金利に戻し、過剰な混乱を生み出すことなく経済から金融政策発の歪みを取り除くことだ」と弁じた。
一方でトランプ大統領もFRBの利上げを「狂っている」とかみ付き、バランスシート縮小もやめるよう促している。
◎痛み分け
<物価上昇率>
FRBはまだ2%の物価上昇率目標達成に関して「勝利宣言」はしていない。物価上昇ペースは目標に近づいているとはいえ、依然として2%に明確に達したり超えて、当局がその状況が持続すると確信できたわけではない。むしろ最近では勢いが弱まっている。
<対話>
金融危機後のFRBは、国民や市場との対話という面で以前よりもずっとオープンになった。非伝統的手段を実行し、国民の信頼を維持する必要がある局面でこれは良い材料だ。
ただこのオープンな姿勢が混乱も生み出している。地区連銀総裁が次から次に情報発信することや、FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)が抱える欠陥などだ。
FRBはドット・チャートを純粋な予想ではないと説明しているものの、市場は予想と受け取り、どれが議長のものかなど、本質的に意味がない「推量ゲーム」を生んでいる。またパウエル氏は最近、中立金利を巡る発言で市場をいたずらに右往左往させる失態を犯した。
今回のFOMCでも、声明は改めて米経済の強さに言及しながら、経済見通しは引き下げ、来年の想定利上げ回数を減らすという矛盾が見られる。