大河原さんは震災に向き合うことを避けるようになった。しかし、被爆体験伝承者の研修を受けていた際、広島の高校生に震災について話してほしいと依頼される。人前で伝える経験になればと、両親のことを第三者的に話した。すると、学生たちの反応は予想外だった。
「両親に共感してくれたようでした。本人から直接でなく、第三者が当事者の想いを話すことで、より伝わることもあると、発見でした」
2020年8月6日は広島、9日は長崎に、原爆が投下されて75年を迎える。広島で育った私は「遭(お)うたものにしか分からん」と被爆者が口にするのをたびたび耳にしてきた。
確かに当事者にしか本当のところは分からない。一方で被爆者の平均年齢は83歳を超え、その経験をどう伝承していくかは喫緊の課題だ。
大河原さんが目指すのは、被爆者に寄り添って、想いを受け取り、伝えるときは聴衆と同じ立場で第三者として語る伝承だ。当事者でないから伝えられることがある。実体験からそう語る大河原さんの活動には、次世代の伝承の大きなヒントがある。
<2020年8月11日号/18日号掲載>
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