<「私たちは自分の着る服を自分で作ることはしない。それは服のメーカーを信用しているからだ」という心理>

ロシアの最も信頼できる独立系調査機関のレバダセンターが発表した世論調査によると、「戦争効果」でプーチン大統領の支持率が押し上げられているようだ。

2月に71 %だった支持率が最新調査では83%まで上昇している。厳しい経済制裁、戦場での膨大な数の死傷者、世界のメディアによる非難の大合唱の下でも、いまプーチンは過去最高水準の支持率を獲得しているように見える。

どうして、こんなことが起きるのか。ロシアの有名テレビ司会者(現在は国外に脱出)は、プーチンを支持するロシア人の心理をこう説明する。

「私たちは自分の着る服を自分で作ることはしない。それは、服のメーカーを信用しているからだ。ロシア人は、ニュースに関しても、作り手、つまり政府が提供するものを信じている。プーチン体制下の22年間、ロシア人は基本的に1つの情報源からしか情報を得ていない」

とはいえ、今日はインターネットでさまざまな情報を入手できる時代だ。どうして、ロシア人は真実を見ないのか。

長時間労働と家事や育児に追われる大多数の国民にとっては、テレビをつけて、そこで報じられている情報を信じるほうが楽なのだ。戦争が始まって以来、ロシア政府は独立系のメディアや政府に批判的なメディアを徹底的に抑え込んできた。

2021年にノーベル平和賞を受賞したドミトリー・ムラトフが率いるノーバヤ・ガゼータ紙も活動停止に追い込まれた。しかし、この種のメディアはそもそも多くの読者を獲得していたわけではない。多くは既に国外に逃れたリベラル派が熱烈に支持していただけだ。

国民の圧倒的多数は、政権の振り付けどおりの報道を行う国営テレビ以外に目を向けようと思わない。

もう1つ否定できない現実がある。人間は自分が信じたいものを信じる性質があるのだ。

ロシアが虚偽情報を流していると批判するウクライナ人のジャーナリストも「戦時に人々の士気を高めるためには、都市伝説が必要」だと述べている。ロシア軍機を次々と撃墜したとされるウクライナ空軍の戦闘機パイロット「キーウ(キエフ)の幽霊」のストーリーはその典型だ。

ロシアで暮らしていたときに私が理解できなかったことの1つは、第2次大戦の対独戦勝記念日(5月9日)を大々的に祝うことだ。

独ソ戦では2000万人以上が犠牲になり、これをきっかけにソ連のスターリン独裁体制がいっそう強化された。こうした点を考えると、この記念日を派手に祝うことは不可解にも思えるが、ロシア人のアイデンティティーは侵略への抵抗と密接に結び付いていて、その歴史が半ば神格化されている。

情報統制に亀裂が生まれる時
【関連記事】