安倍晋三の成績表:景気刺激策、対米対中外交、防衛力強化......もしかして史上最高の首相?

2019年12月25日(水)16時45分
グレン・カール

トランプのいじめに耐える寛容さは◎。安倍の「通知表」 12月24日号「首脳の成績表」特集31ページより

世界的な政治問題でも、安倍は日本の関与を積極的に拡大してきた。6月には、核合意をめぐるアメリカとイランの対立を解決するため、自ら仲介役を買って出てイランに乗り込み、ハサン・ロウハニ大統領と会合を持った(とはいえ当初の目標は達成できなかったが)。

安倍が8年がかりで進めてきた軍事力の強化と、国際的な影響力拡大は今、日本にとってこれまでになく重要な意味を持つようになった。アジアで中国が強大な影響力を持ち、アメリカの地盤沈下が進むなか、日本は戦後75年で初めて、真の意味での「独り立ち」を迫られている。その意味で、安倍は最高司令官として高い評価に値する。

無駄なオリンピック誘致

安倍にとって第2の戦略的重要課題は、経済の活性化であり、20年にわたる低成長およびデフレとの決別だった。ここでも安倍は金融緩和と積極財政により景気を刺激し、規制緩和を進めるという明確な戦略を示した。そして日本経済を復活させるために、伝統的な手法は全て試した。

さらに安倍は、この10年で外国人労働者の受け入れ数を倍増させ(これだけでも日本にとっては革命的な措置だ)、少子高齢化と労働力の減少という人口動態の危機を食い止める措置に着手した。その結果、日本は戦後最長の景気拡大を経験してきた。

ただ、2020年東京オリンピック開催に向けた莫大な投資は、せっかくの積極財政の効果を一部台無しにしてしまった(いつになったら国家首脳は、オリンピック開催など虚栄心を満たすだけで、国内経済のためにはならないと学ぶのだろう)。2度にわたる消費税引き上げは、そのツケと言えるかもしれない。

安倍は景気回復のためにさまざまな措置を取ってきたが、それらは総じて十分野心的とはいえなかった。アメリカは2008年のリーマン・ショック後に大不況に見舞われたとき、もっと積極的な金融緩和と税制措置、そして規制緩和を進め、一貫して強い成長を生み出した(もちろんアメリカは日本のような少子高齢化に直面していないという違いはあるが)。

それでも日本は、安倍という先見の明があり、一貫した戦略的ビジョンを持つリーダーを持つことで、大きな恩恵を受けてきた。おかげで日本は、世界の舞台でより大きな役割を担い、重要な同盟関係を維持し、自衛隊の活動範囲を拡大し、少なくとも部分的には経済を再活性化することができたのだ。

これはかなり高い成績に値するといっていいだろう。

<本誌2019年12月24日号:特集「首脳の成績表」特集より>

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