最新記事

首脳の成績表

文在寅の成績表:これといった成果なくレームダックが懸念だが...

2019年12月17日(火)16時50分
浅川新介(ジャーナリスト)

STRAIGHT OUTTA DMZ=非武装地帯から来たけど文句あるか ILLUSTRATION BY ROB ROGERS FOR NEWSWEEK JAPAN

<任期半ばを過ぎた韓国大統領は「良くやっている」のか? リーダーとしての能力と資質から韓国政治を読み解く。世界の首脳を査定した本誌「首脳の成績表」特集より>

レームダックに陥るかどうか。2017年5月の就任から任期半ばを過ぎた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、来年本当の正念場を迎える。1期5年制で再選がない韓国の大統領は、歴代経験者を振り返ると、ほぼ任期半ばから3年を過ぎたあたりで急速にレームダック化するのが宿命だ。
20191224issue_cover200.jpg
ただ、文本人にはそれほどの覚悟は感じられない。「現状のまま任期まで突っ走るし、それができる」(大統領府関係者)という、妙な自信さえ感じられる。

前大統領の弾劾という前代未聞の事態を受けて大統領になった文は、過去の保守政権の「積弊」、すなわち積み重なった悪弊を一掃し、クリーンで公正な社会をつくるとぶち上げた。が、その公約は既に疑わしい。

2019年10月の韓国の世論調査によれば、文政権の実績評価について、「良くやっている」で多かったのは「改革」(政治的な不公正さの是正、権力機関への監視)が18.9%で最多。次に「福祉」(基礎生活、医療、老後への施策)が15.5%となっている。

一方、「良くやっていない」の筆頭は「経済」だ(16.6%)。2017年に世界経済の先行きが怪しくなり、若年層を中心とする就職難などへの不満が文を大統領に押し上げた側面があった。

だが、最低賃金引き上げを中心とする「所得主導経済」は、財界、特に中小企業や自営業者などから強い反発を受けた。妥協はしながらも最低賃金を引き上げたが、その結果、企業は人件費の増加に耐え切れず、雇用ができなくなり倒産するケースも相次いでいる。現在の経済政策の変更を強く求める声も絶えない。

さらに、3回の南北首脳会談を実現した朝鮮半島政策への評価も渋く、「誤った政策」の3位(13.6%)に。北朝鮮に批判的な保守層と、政権の支持基盤で北に融和的な進歩(革新)層との両極化を促してしまった側面がある。

確かに、実際に対話はしたものの、北朝鮮の非核化や具体的な経済協力事業にはつながっていない。逆に、「文は約束を守らない」と、北朝鮮の信用を失っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

エアバス、今年の納入目標引き下げ 主力機で部品不具

ビジネス

バイナンス、共同創業者イー・ハー氏とテン氏の二重指

ビジネス

英HSBC、ネルソン暫定会長が正式に会長就任 異例

ワールド

ハマスが2日に引き渡した遺体、人質のものではない=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 10
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中