金融危機は「グリーン」な投資で脱出できると世界の指導者たちが主張しはじめた理由
オバマの公約はほかにもある。家庭用電源から電力を供給できるハイブリッドカーの商業化促進、再生可能エネルギー開発計画やエネルギー効率化の促進、低排出の石炭産業への投資、次世代バイオ燃料の研究。さらには復員軍人が環境関連産業で働くためのトレーニングを提供したり、既存の工場を改装して環境にやさしい製品を製造する計画にも着手するという。
大統領選でオバマ陣営のエネルギー・環境政策を担当したヘザー・ザイカルによれば、オバマはこうした分野への投資をアメリカにとって必要なものとみており、政府が主導すべきだと考えている。「自由市場が問題を解決するのを待っていられないと思っている」と、ザイカルは言う。
世界経済の危機とアメリカ政治の歴史的変化が同時に起きた今、一部の欧州諸国はアメリカよりも早く対策に踏み出した。国連の最近の報告によれば、ドイツでは再生可能エネルギー業界(2400億ドル規模)がすでに25万人を雇用している。この業界の雇用者数は、いま製造業で国内最大の自動車業界を20年までに上回りそうだ。
イギリスは20年までに、風力発電用タービンの設置計画に1000億ドルを投じる予定だ。英政府によれば、これによって16万人の雇用を創出できる。
「世界が困難な経済状況に直面する今、気候変動問題は二の次でいいという意見もあるが」と、ブラウン英首相は語った。「今だからこそやるべきだ」
しかし、こうした計画はどこまで有効なのか。雇用を生み出すことはできたとしても、温暖化対策には本当に役立つのか。
IEAのチーフエコノミストであるファティ・ビロルは「エネルギー利用のグローバル革命」を訴えてきた当事者だが、先行きには悲観的だ。景気後退を脱する策としてエネルギー経済の変革をめざすというシナリオは「絵空事」だと、彼は言う。
理由は実に単純だ。景気後退期には一次産品の消費量が低落傾向になり、エネルギー価格も下がる。そうなれば、代替エネルギーを開発する意欲もうせてしまう。
原子力発電所の建設や風力発電用タービンの設置、バイオエタノールの生産、電気自動車などの研究開発、それらを支えるインフラの整備----どれも莫大なカネがかかるのに、見返りを得られるのはずいぶん先の話だ。資本が目減りし、信用が収縮し、原油価格が7月のピーク時の半分にまで急落した今、投資家はすぐには結果の出ない温暖化対策に巨額の資金を出したがらない。