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国立国会図書館の運営する「デジタルコレクション」というものがある。著作権の切れた古い資料を中心に、スキャニングしてデジタル化したもので、利用者登録していれば自宅からパソコンでアクセスし、ダウンロードできるものも多い。
デジタル化が進んでかなり多くの資料がみられるようになり、調べ物に便利に使っている。
なかでも威力抜群なのが「全文検索」という機能で、キーワードを入れて検索をかけると、全部の資料を検索し、その語が用いられている箇所をピックアップして表示してくれる仕組みになっている。
紳士録や同窓会名簿なども入っているから、知らない人物の正体が思わず判明するなど、重宝させてもらっているのだが、この機能、それを通り越して、人文学のあり方を決定的に変えてしまう力をもっているのではないかと思わされるのだ。
最近、ふと思いついてある調べ物をしたときに、それを実感させられた。大阪の朝日放送で制作している『探偵!ナイトスクープ』というテレビ番組がある。今でも続いている長寿番組だが、ずいぶん前にこの番組で《たにし踊り》という奇妙な踊りを取り上げたことがある。
薬学部を卒業した夫が、この変な踊りを妹の結婚披露宴で踊るというので困っている、夫はそれが全国の薬学部で古くから踊られている由緒正しいものだと言うが信じられない、調べて欲しいという視聴者からの依頼を受けて「探偵」がいろいろ調べ、おもしろおかしく解決する。
各地の薬局をまわって薬剤師の方から話をきくなかで、京薬(京都薬学専門学校、現京都薬科大学)の戦前の卒業生でこれを踊れるひとを発見、一緒に踊ったところ、親子以上に年齢が離れているのに、歌詞も振りも驚くほど一致し、その「由緒正しさ」が証明された、そんな番組だった。
【動画】《たにし踊り》とはどんな踊りなのか?...盆踊りに取り入れる地域も
ひょんなことからこの踊りのことを思い出し、デジタルコレクションの全文検索で何がわかるか調べてみようと考え、「タニシ踊り」、「田螺殿(たにしどの)」等々、いくつかのキーワードを入れて検索してみたところ、全部で100件あまりがヒットした。
もちろん、これで全てがわかるというのは言い過ぎだが、ちょっとびっくりするくらいにいろいろなことがわかったのだ。その全貌を事細かに語る余裕はないが、以下に大まかに整理してみる。
各地の薬学部で戦前から踊られていたというのはその通りで、検索でヒットしたものの中には『日本薬報』、『薬草誌』などの薬学系の雑誌などが数多くあり、東薬(東京薬学専門学校・現東京薬科大学)、京薬など多くの薬学専門学校で相撲大会などの応援の折や運動会の出し物として演じられている様子が窺える。
