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「ジャーナリストは何も変わっちゃいない。変わったのは世界の方でね」
と、語ったのはジャーナリストの先輩である。雑誌を主な戦場とし、あまたのスクープをあげてきた。自らの足で事実を拾い集め、新説を世論へ訴え「世界を変えよう」と試みる人たち。
なかには政治的に偏った人もいれば、人格破綻者もいる。だからこそ、地位や名声を捨ててでも社会正義のために「書く仕事」ができる。これが昭和のジャーナリストに抱かれてきたイメージではないだろうか。
ところが、30代に「ジャーナリストってどんな人?」とざっくばらんに聞いてみると、毛色の異なるキーワードが頻出する。
「新聞社やテレビ局の社員。自社系列のバラエティー番組にちょうどいいネタを探して記者会見へ突撃してヤジを飛ばし、相手が少しでも失言したら切り取ってゴシップ記事に書く人」
なんとも不名誉な誤解である。最近の例を挙げると「女性を組織的に関係者へ "上納" していたのではないか」と疑惑が持ち上がったフジテレビの記者会見で、質問に関係ない主張を一方的にわめいたジャーナリストが批判の的となった。
もちろん、日本にも伝統的なジャーナリストはいる。だが、マスメディアで目立つジャーナリストが悪目立ちしてしまう。
では、伝統的なジャーナリズムをやっている人間は、何をしているのか。
たとえば、私の尊敬するジャーナリストの高橋ユキさんは、事件現場を歩いて住民の信頼を得ながら聞き取り調査を行い、緻密に事件の真相を解き明かしている。しかし、高橋さんがその業務に集中できているかというと、難しそうに見える。