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「ミャンマー被災者を見捨てるのか?」軍政拒否と支援のジレンマ

THE US MUST CHANGE COURSE ON MYANMAR

2025年4月15日(火)18時06分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

災害支援に限らず、米政府の対ミャンマー政策は民政移管はおろか、治安の改善にも全く貢献してこなかった。むしろその逆だ。

制裁は軍政指導部には大した打撃を与えず、ミャンマー全土を無法状態に陥らせ、軍閥や人身売買の斡旋業者、麻薬組織、武器商人、密猟者をはびこらせてきた。

ミャンマーは、今ではアフガニスタンを抜いて世界最大のアヘンの生産国となり、「世界組織犯罪指数」ランキングで不名誉な第1位を占めるありさま。その影響で近隣諸国の治安まで悪化している。


反政府勢力の支援が、人権をめぐる大惨事を悪化させてもいる。最近脱出している大量のロヒンギャ難民は、国軍でなく反政府勢力のアラカン軍から逃れている。

一方で中国はミャンマーに築いた戦略的な足場を強化している。ミャンマーには豊富な天然資源がある。米主導の制裁で国際的に孤立するなか、この国の経済は中国頼みにならざるを得なかった。

米政府は以前にも同じミスを犯している。11年まで続いたミャンマーのかつての軍事政権にも制裁を科したが、中国が影響力を増しただけで国軍の支配はビクともしなかった。

風向きが変わったのは、バラク・オバマ元米大統領が制裁を緩和し、戦略的な関与を打ち出してからだ。オバマが米大統領として初めてミャンマーを訪問した3年後の15年に実施された総選挙で、アウンサンスーチー率いる文民政権が誕生した。

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