最新記事
AI

アメリカはすでに追い付かれた----「AI大国・中国」の台頭とイノベーションの行方

Emerging Chinese AI

2025年2月12日(水)16時30分
高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)
アメリカはすでに追い付かれた...世界のイノベーションの主力、AI大国・中国の台頭とその背景

現代の科挙といわれる中国の大学入試「高考」に挑む学生たち(2024年6月、重慶市) COSTFOTOーNURPHOTOーREUTERS

<世界を驚かせた「中国産」ディープシーク(DeepSeek)。その原動力は、理系人材の豊富さ、教育熱、そして知的エリートの帰還だ。アメリカが追い出してしまった「イノベーションの源泉」とは?>

中国のAI(人工知能)はアメリカを追い抜いたのか。最新AI「ディープシーク」がもたらしたショックは巨大だ。

米オープンAIが高水準の推論能力を持つAI「o1(オーワン)」を発表したのは昨年9月のこと。今年1月に発表されたディープシークの「R1」は、それとほぼ同等の性能を持つ。


つまり、アメリカのアドバンテージはたった4カ月しかないことになる。

いや、開発・運用コストの安さを考えれば既に追い付かれたのではないか。先端半導体の対中輸出禁止は無駄だったのか。中国AIの台頭を抑止する手段はないのか......。ディープシークをきっかけに多くの議論が交わされている。

中国では「アメリカに目にものを見せてやった」と無邪気に喜ぶ声が多い一方で、ちょっと偏った見方も浮上している。それは「アメリカに留学した中国人を、祖国に残った中国人が打ち破った」というものだ。

オープンAI、メタ、グーグルなど米テック企業を支えているのは中国人エンジニアである。アメリカの外国人留学生のうち、約4分の1が中国人。国別でインドに次ぐ2位となっていることを考えれば、それも当然だ。

清華大学や北京大学など、中国の名門大学の卒業生のうち、成績優秀なエリートは欧米の大学院に進学するのが一般的なコースで、いかに名門大学であろうと、中国に残れば格落ち扱いを受ける。

つまり、中国の視点から見ると、ディープシークの成功は二軍の人材が一軍の留学組を打ち破ったという痛快な物語に見える。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀総裁会見のポイント:関税合意の評価と見通し実現

ビジネス

物価予想引き上げ、25年度+2.7% 見通し実現な

ビジネス

午前のドルは148円後半へ下落、日銀決定には値動き

ワールド

自民、両院議員総会を8月8日に開催 参院選を総括 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中