最新記事
ウクライナ情勢

訪中のウクライナのクレバ外相「ロシアと対話の準備ある」

Ukraine "prepared" for peace talks with Russia, China claims

2024年7月25日(木)15時25分
ブレンダン・コール
ウクライナのクレバ外相とアメリカのブリンケン国務長官

ウクライナのクレバ外相(左)とアメリカのブリンケン長官(7月9日、米ワシントンの国務省で) Allison Bailey via Reuters Connect

<クレバはウクライナ侵攻以降で中国を訪れた最も高位のウクライナ当局者。ゼレンスキー大統領も11月の平和サミットにロシアも代表団を送るべきだと発言、対話のシグナルを送っている>

ウクライナのドミトロ・クレバ外相はロシアのウラジーミル・プーチン大統領が始めた戦争について、ロシア政府と交渉する用意がある──中国外務省が発表した。

【動画】中国の和平仲介攻勢:ファタハとハマスの次は、ロシアとウクライナか?

中国外務省の説明によれば、クレバは広東省で中国の王毅外相と会談し、ウクライナはロシア政府と「対話と交渉を行う用意がある」と述べた。翻訳によればクレバはさらに、「交渉は公正で持続的な和平を達成することを目指した、合理的で実質的なものであるべきだ」と発言したという。

だがウクライナ外務省は中国側の発表を一部否定する声明を出し、クレバはロシア側が誠実に応じる用意があれば対話をするつもりがあるが、今のロシアにそのような用意があるようにはみられないと強調したと述べた。

ウクライナ外務省は、「ロシアによる侵略は平和を壊し発展を遅らせている」というクレバの発言を引用。クレバはさらに、「ウクライナに対する戦争を終わらせ、平和を回復し、国を復興する」ことが必要だとつけ加えたという。

本誌はこの件についてウクライナ外務省にコメントを求めたが、これまでに返答はない。

クレバはロシアがウクライナへの本格侵攻を始めた2022年2月以降に中国を訪れた、最も高位のウクライナ当局者だ。

中国はこの戦争について、公式には中立の立場を取っているものの、プーチンに外交面や経済面で支援を提供し、過去2年半の間にロシアとの貿易や防衛関係を大幅に増やしてきた。

領土割譲も受け入れか

ウクライナで続く戦闘を終結させるための協議実現の公算は高まりつつあり、7月15日にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、11月に開催を予定している平和サミットにはロシアの代表団も出席すべきだと発言した。

ゼレンスキーはプーチンとの会談は拒んでいるものの、ロシア政府が和平計画を協議し「国連憲章に沿った形で戦争を終わらせることに合意するなら、我々には対話の用意がある」と述べた。

7月23日にキーウ国際社会学研究所(KIIS)が発表した世論調査の結果によれば、ウクライナ国民の間では、和平と引き換えにロシアへ領土を割譲することを支持する声が高まっている。

今回の世論調査で和平のためなら領土の割譲を受け入れると回答したウクライナ人は全体の32%にのぼり、2023年2月の9%、2024年2月の26%から増加した。それでも、開始から2年半になる戦争を終わらには、まだいくつもの障壁がある。

元ウクライナ兵のアナリストであるビクトル・コバレンコは、「(ロシアが2014年に一方的に併合した)クリミア半島が以前として和平の最大の妨げになっている。プーチンは、クリミア半島がロシアにとって最も重要な資産だと考えている」と指摘した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、印への対戦車ミサイル・誘導砲弾売却承認 930

ビジネス

金利正常化は「適切なペース」で、時期は経済・物価見

ビジネス

PB目標転換「しっかり見極め必要」、慎重な財政運営

ワールド

中国、日中韓3カ国文化相会合の延期通告=韓国政府
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中