最新記事
クリミア攻撃

黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

Russian admiral's death is "remarkable" for Ukraine: Ex-NATO commander

2023年9月26日(火)17時13分
トーマス・キカ

黒海艦隊の威容は過去のものか?(2014年5月8日、セバストポリ港)

<「提督」クラスが戦死は滅多にないが、それがロシアの誇る黒海艦隊で起きた、というのがウクライナの主張だ。連日のようにウクライナ軍の攻撃が続くなか、ロシア海軍が取った行動は>

<動画>潜水艇が黒海艦隊の大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」を直撃する瞬間

ウクライナ軍による攻撃で、ロシア黒海艦隊の司令官ビクトル・ソロコフ提督が死亡したとみられることについて、ジェームズ・スタブリディス元NATO欧州連合軍最高司令官は、ウクライナにとって「素晴らしい戦果」だと評価した。

ウクライナ政府は9月25日、クリミア半島にあるロシア海軍黒海艦隊の司令部に対して、22日にイギリスから導入した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」で攻撃を行い、成功したと発表。この攻撃で海軍要員100人超が負傷し、ソコロフを含む34人が死亡したという。ソコロフは同艦隊の司令官で、ウクライナ側にとってきわめて重要な標的だった。

ベラルーシの反体制メディア「ネクスタ」によれば、ウクライナ特殊作戦軍は声明で、「揚陸艦ミンスクが翌日に戦闘任務に就く予定であることがわかり、ロシア海軍の人員が多く集まると想定した」と述べた。「犠牲は62人にのぼった。取り返しのつかない損失だ。ロシア黒海艦隊司令部の攻撃で、黒海艦隊の司令官を含む34人の将校が死亡し、ほかに105人が負傷した。司令部の建物は復旧不可能だ」

提督の戦死は第2次大戦以来

スタブリディスは25日、X(旧ツイッター)上に「ロシア軍の重要な指導者とその配下の要員多数を排除したことは、ウクライナの素晴らしい戦果だ」と述べた。「提督の戦死は第2次大戦以来ではないか」

第2次大戦では、米軍複数の提督が交戦中に死亡している。

スタブリディスは元米海軍提督で、1970年代以降、軍のさまざまな役職を務めた後、2009年から2013年まではNATO欧州連合軍の最高司令官を務めた。ロシアとウクライナの戦況について、専門家の視点から頻繁に意見を求められている。

ロシア政府はまだソコロフの死亡を確認しておらず、クリミアへの攻撃についてはウクライナ政府と食い違うコメントを出している。ロシア国防省は22日に発表した声明の中で、攻撃により黒海艦隊司令部が損傷したと認めたものの、兵士1人が死亡したのみだと述べた。後に声明を修正したが、問題の兵士については死亡が確認された訳ではなく、行方が分からないだけだ、という内容だった。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米クアルコム、10─12月期見通しが予想上回る ス

ワールド

EU、レアアース供給で中国と対話の「特別チャンネル

ワールド

ブラジル中銀 、3会合連続金利据え置き 物価目標達

ワールド

WEF総裁が「3つのバブル」警告、仮想通貨・AI・
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショックの行方は?
  • 4
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 5
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中