最新記事
ロシア

プリゴジンはプーチン史上最大の裏切り者?──ウクライナにバフムトを売ろうとしたと米紙が暴露

Has Putin suffered his biggest betrayal yet?

2023年5月16日(火)14時36分
ブレンダン・コール

「プーチンのシェフ」とも呼ばれたプリゴジン(左)とプーチン(中央)の蜜月は遠い過去?(写真は2011年) Misha Japaridze-REUTERS

<ワシントン・ポスト紙が、ワグネル創設者プリゴジンの「裏切り」を暴露。これが本当ならプリゴジンは国家反逆罪に問われて命はないと、ロシア専門家は大騒ぎになっている>

ロシア大統領府は、ロシア大統領府が民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンを「国家反逆罪に問う可能性がある」とする報道を否定した。

ワグネルの傭兵部隊はウクライナ東部の激戦地バフムトで戦闘を続けており、プリゴジンはこれまで、ロシア軍の上層部に弾薬の提供を訴えてきたが無視されたとして、ロシア国防省を繰り返し非難してきた。

こうしたなか米ワシントン・ポスト紙の報道によれば、プリゴジンが1月に、ウクライナ国防省情報総局(GUR)に対して、ウクライナがバフムトから部隊を撤退させればロシア軍部隊の位置情報を提供すると打診していたことが分かった。流出した米国防総省の文書から判明したという。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフこの報道について、「評価の高い新聞」さえが報道してしまった「馬鹿げたデマ」と一蹴したと、ロシア国営通信社のRIAノボースチは伝えた。

本誌はこの件についてロシア国防省にコメントを求めたが、返答はなかった。

ワシントン・ポストはまた、プリゴジンがアフリカで電話および対面でウクライナの情報当局とやり取りを行ったと報道。ロシア側には弾薬が不足しているとして、ウクライナ軍にもっと攻撃を強めるよう促した、とも報じた。

ウクライナは信用せず

プリゴジンはまた、ウクライナ政府にクリミアを攻撃するよう促したほか、バフムトにいるロシア軍部隊の詳細な位置情報を提供すると申し出たという。ウクライナ政府はプリゴジンを信用せず、彼の申し出を断ったということだ。

ワシントン・ポストの報道を受けて、プリゴジンはメッセージアプリ「テレグラム」に「(GURトップの)キーロ・ブダノフと私はまだアフリカにいる」と投稿して同紙を揶揄。「我々には何も隠すことはない」とつけ加えた。

プリゴジンを繰り返し非難してきたロシアの軍事ブロガーで、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の司令官を務めたこともあるイーゴリ・ギルキンも、珍しくプリゴジンを擁護した。

「個人的にはどんなにプリゴジンが嫌いでも、彼がロシア軍の機密情報を渡してバフムトを売るとは思わない」とギルキンはテレグラムに書いた。

「プリゴジンは明らかに精神病質者だが、敵と直接接触するほど愚かではない」。そんなことをすれば、「国家反逆罪に問われる」危険があることは分かっているはずだ、と述べた。

それでもソーシャルメディアユーザーの間では、プリゴジンがウラジーミル・プーチン大統領を裏切ったという報道が持つ重大な意味について、さまざまな憶測が飛び交った。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドイツ下院、新たな兵役法案承認 ロシア脅威で防衛力

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中