最新記事
新型コロナウイルス

「ウイルスは研究所で生まれた」──いまだ「機能獲得実験の証拠」がタブーな理由とは?

A China Lab Leak?

2023年4月21日(金)13時24分
スティーブン・クエイ(医師・科学者)
武漢ウィルス研究所

新型コロナは研究所由来だとの主張を黙殺したメディアも多かった(武漢ウィルス研究所)Thomas Peter-REUTERS

<学術界は「情報の門番」として、研究所由来のウイルスであるという情報を阻止してきた。しかし「事実」に目をつぶれば、さらに恐ろしいウイルスが登場する>

後にSARS-CoV-2と呼ばれることになる新型コロナウイルスを私が最初に認識したのは、2019年12月下旬のことだ。

中国で未知のウイルスが出たというニュースを偶然聞いて、その翌日には武漢市中心医院のある症例報告を目にした。

その家族は父親と母親がかなり珍しい症状の肺炎を患っていた。息子は症状が出ていなかったが、肺のレントゲン写真には全く同じ病変が写っていた。

同院の艾芬(アイ・フェン)医師は、すぐに新型のコロナウイルスだと気が付いた。人から人へ感染すること、無症状の場合もあることが分かったが、誰も警告に耳を貸そうとしなかったと彼女は主張している。

20年1月にこのウイルスのゲノムを初めて見たとき、私はかなり厄介なことに気が付いた。タンパク質が切断されたフーリン切断部位(FCS)があったのだ。

FCSはウイルスをヒトの細胞に感染しやすくする遺伝的特徴で、SARS-CoV-2に関連するそれまでのコロナウイルスには見られなかった。

自然界ではSARSウイルスにFCSが確認されたことがないため、研究者は実験室でウイルスにFCSを人工的に作り、その効果を確かめてきた。私の知る限り、論文として発表されている全ての研究で感染力、伝染性、病原性のいずれか、またはそのうちの2つ以上が高まっていた。

生物兵器の話はタブー

SARS-CoV-2では、自然感染に見られる特性は今に至るまで1つも発見されていない。このウイルスが過去に例のある種類のスピルオーバー(異種間伝播)だという見解を裏付ける証拠も、私は1つも知らない。

私の見解では、このウイルスは自然感染というより、研究所の事故の結果として起こる状況にはるかに似ている。

実際、私は20年末に行った分析で、SARS-CoV-2が研究所由来である確率を99%と判断した。当時はテレビやラジオの取材を数多く受け、米連邦議会でも証言したが、左寄りの主流メディアからは呼ばれなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中